8、子どもは困らない。

勉強しないと結局は困る、と思うのは親の思い込みである。

子どもは絶対に困らない


成績が低くたってちっとも恥ずかしくない。
(マンガの主人公で成績のいいヤツなんているか? タレントは片っ端から元不良らしいし、東大出たヤツはみんなオカシイってテレビで言ってたゼィ!)。


宿題をしなくたって少しもかまわない。
(先コーが恐くて生徒ヤッテラレッカよッ……なにせ絶対ボーリョクふるわねェんだから)。

忘れ物をしたら、友だちから借りればいいじゃんかヨ。
友だちが貸してくれなかったらその辺に落ちてるヤツ(例えば友だちの机の中に落ちてるの)を借りればいいじゃんか。
オレ鍵のかかっていない自転車はいつも借りてるぞ。


どう見たって大学へ行ってるアニキより、高校中退してバカやってる隣りの兄チャンの方が暮らしがいいのはどういうわけだ?
同じオヤジでも、ウチの親父より、矢沢の永チャンの方がカッコいいじゃないか、何で勉強なんかせにゃいけんのよ・・・・・・・・・。

まったくその通りだ

子どもは絶対に困らない
困るにしても、それは取り返しがつかないほど手遅れになってからのことだ。

そしてすでに手遅れになっている以上、親のアドバイスは『やっぱり親父は偉かった』という感慨以外の何も残さない。そんなもんだ。

しかし、そうは言っても真に息子のことを考えるなら、取り返しのつくうちに更正させてやらなければならない、ということもあるだろう。


そもそもこの家には「他人に迷惑をかけない」くらいの倫理しかなかったらしいところに問題がある。
その点で「困るのがぼくだけなら何の問題もないじゃないか」という息子の返答はマトを得ている。

昔、吉田松陰は養父に
「怠けるな! お前が一日怠ければ長州藩の領民の苦しみが一日延びるのだ」
と、ほとんど死ぬくらい殴られたそうだが、この家の息子はそんな大器じゃあない。
しかしそれにしても、「勉強しないで困るのは結局お前なんだ」以外に言いようはないのだろうか。

芸のない話だ。

武田鉄也の「日本の輝く星になれ」まで行かずとも、せめて「世の中の役に立つ人間になれ」くらいは言っておいても良かったはずだ。