自分に正直に生きたい。





誤答
@生きていく上では、正直だけじゃだめなときがあるんだ。
Aそれで生きて行けると思うか?!



正答
@お前って何なんだ?



解説
「自分に正直に生きたい」は若者言葉の中でも最悪のものだ。
まさに正義と説得力のかたまりで、これに向かって「嘘の人生を歩め」とは誰も言えない。
@とAが誤答であるのはそのためだ。

「嘘をつかなければ生きていけない」という述懐からは悲哀しか感じられない。
そしてまたまったく正義に反する。
そんな悲哀に満ちた父親の姿に、同調しようとする子どもなどいない。
親に逆らおうとする子は、そんなに優しくないのだ。






ただし「自分に正直に生きたい」は正義だと言った、そこにも抜け道はある。
それはまさに
「正直に生きるべき自分」そのものだ。


「勉強はしたくないけど、人に自慢できる学校に入りたい」
さて、本当の自分はどちらなのだ?
「勉強はしたくない」自分と「人に自慢できる学校に入りたい」自分。
そのどちらに正直に生きたいのだ?
そういう問いかけのしかたを続ければいい。

「両方」
おそらくそれが本音だろう。けれどそう言った瞬間から、大人が何も言わなくてもその理不尽さに本人が気づくはずだ。


@お前って何なんだ?
まずはこう問いかける。そして子が何かを語り始めたら、それと矛盾するもうひとりの「お前」を次々と見せてやればいい。

アレ? オレにはこんな願いもあったんだ、こんな気持ちもあったんだと子が思い始めたら、この勝負はこちらの勝ちで終わりだ。



参考

社会と矛盾せず、しかも自分の中で矛盾しない「自分」を持つことを「アイデンティティの獲得」という。
アイデンティティのしっかりした子はそもそも「自分に正直に生きたい」などとは言わない。
「自分」の隅々まで嘘がないからだ。

私たち大人だってそうだ。社会人として生きていく上ではさまざまな欲望を押さえつづけていくしかないが、それは「欲望を満足させたい」という自分に不正直な生き方をしているわけではない。

もっと大切な「本当の自分」に正直であるために、我慢しているだけのことなのだ。

そこんとこを、子に伝えなくてはならない。