by   小児科医 田中

     

 ボランティアの学生ですが、基本的なところを教えてください。
 てんかんとけいれんは違うのですか。

     A
 

 「けいれん」とは症状の一つ(例えば咳とかと同じ)です。
 「てんかん」は脳の過剰放電により、けいれんを繰り返す病気です。

    

   Q

 

  てんかんの発作はどうして起こるのですか。

      
     A  

 

 「神経細胞の過剰放電による脳の機能障害」が定義です。
  つまり、脳内になんらかの原因があり、そこから過剰放電が出現し、
 人によっては、けいれんの症状をひきおこしています。 

 

     Q

  

 発作が起きると、体にどんな悪影響がでるのですか。

    A                         
          
 


 発作がおこると、脳細胞が死ぬと言われています。
 確かに間違いではありませんが、人間の細胞はとても多いので
 少しくらいの発作では影響ありません。
   しかし、重積発作といって15分あるいは30分以上続く発作の時は
 影響があるかもしれません。
 また、二次的に誤嚥による窒息などの危険性があり、
 この影響は御存知の通りです。    

    

     Q

 

  けいれん発作の種類が色々あってわかりません。
 分類の仕方の考え方だけでも教えてください。

      A

 「けいれん発作の分類」と「てんかんの分類」とは異なります。

                                                                                               

  けいれん発作の分類は
 
    部分発作 ― 単純(意識は、はっきりしている)
              複雑(意識がはっきりしない、、または意識がなくなる、
                  などの意識の障害がある)
                運動症状 自律神経症状 体または特殊感覚 
                             精神症状からはじまるもの 意識の障害から 自動症 
         *二次性全般化 
    
    全般発作 ― 欠伸 ミオクロニー 強直発作 強直間代性
                           脱力発作
    
    *強直発作 強直間代性または間代性 欠伸発作 
           部分発作の順に多い

 このようにまず「部分」か「全般性」に分けます。
 部分は意識が正常な「単純」と意識が障害される「複雑」に分けます。

 全般性はいきなり全身症状がくるものと思ったらいいですが、
 部分発作も二次性全般化となれば最初から全般性との区別が
 難しくなります。
 

 

   Q  

 

 ボランティアです。目の前で、子どもさんが発作を起こして倒れた時、びっくりして何もできませんでした。
 強い発作が起こった時、どんな対処をしたらいいのでしょう。
 また、食事中に起きたら、対処の仕方は違いますか。
  

     A
 

 

 まず、楽な姿勢を取らせ、他の人を呼んで下さい。
食事中は誤嚥(気管の方に食物を詰まらせて窒息させる)をおこしますので、口にある食物をかき出したり、吸引したりします。
また、嘔吐する可能性があるので、子どもさんの顔は横を向けて下さい。

 
 

     Q

 

 うちの子どもはお風呂に入った後、吐いてそれからぐっすり寝ますが、
入浴剤がてんかん発作の引き金となることがありますか。
 ほかにどんなことが引き金となることがありますか。

     A





 

 発作の引き金(誘因)としては光、音、入浴、精神的ストレス、緊張、
手足の運動(訓練)?、発熱、感染、便秘、窒息、睡眠不足、不規則な生活、
怠薬(薬を飲むのを怠る)などがあります。
 したがって最初の質問は入浴剤というより、入浴自体が誘因の可能性が高いと思われます。もちろん、入浴剤が本人のストレスになっている可能性もありますが・・・。


 

     Q

 

 その場合、入浴自体が発作の誘因になるのなら、
何か対策があるでしょうか? 
 たとえば、シャワー中心にする、ぬるいお湯にはいる、
時間を短くする、など?

     A
 

 

 ケース・バイ・ケースだと思いますし、詳しくは分かりませんが、
そういう方法でよいと思います。


 

     Q

 

.検査の結果がまだでないので薬は服用していませんが、
別に顔色が悪くなるわけでもなく、突然眠ってしまいます。
その後1時間ほど眠ると、すっかりいつもと同じように過ごしますが、
これも、てんかんの一種でしょうか?

     A


 

検査結果(脳波でしょうか?)がでるともう少しはっきりすると思います。
そういうてんかんもあります。


 

     Q

 

 眠りはじめや起きがけに発作が出やすいようです。
朝、うつらうつらしてる時に、暖かいタオルで顔をふいてやるなどで
シャキッとさせると発作は少なくなるのでしょうか。
こんなのではだめですか。

     A

 

 

 確かに発作が減るかもしれません。
しかし、これが刺激となって、かえって増加するかもしれません。
しかも、使用するタイミングが難しいと思いますので、あまり実用
的ではないと思います。


 

     Q
 

 心理的なことも関係するのですか。
緊張するとか、いやなことがあった、などでも。

     A

 

そのとおりです。これはそう感じる年齢以降(思春期)に多いと思われます。

 
 

   Q

 

 発作の状況を調べるため、「何時何分、どんな発作が、何十秒−−−」と、
発作表を記録していましたが、大変です。
お医者さんに見せても忙しそうであまり見られないようです。
ずっと記録していく必要があるのでしょうか。
 

  A



 

 大きく変わらないときは簡単に目を通すくらいです。
しかし、頻度、程度に変化があればよく見るはずです。
人間の「記憶」はあてにはなりません。
しかし、「記録」はあてになります。
後で見るときっと役に立ちます。残しておきましょう。

 

  Q 

 発作の状態を他の人に伝えるには、どんな方法がわかりやすいでしょうか。

  A



 

 上記のように記録に基づくものがいいでしょう。
発作は個人によって異なります。
専門用語より、手がどうなって足がどうなって、意識がどうなってなど、
そのままを伝えたほうがいいと思います。

 

     Q
 

 うちの子どもは抗てんかん剤単独では飲めないので、
食事と一緒にして飲ませていますが、
一緒に食べてはいけないものはないですか。

     A


 

 基本的にはできれば食事の前後の内服がよいと思います。
しかしどうしてもだめな場合は仕方ありません。
その際もご飯にふりかけというより、デザートの方がいいと思います。

 

     Q
 

 体調を崩し、薬が飲めない、もしくは吐いて
しまうときはどうしたらよいですか。

     A



 

 発作がおきやすいことを前提に座薬を先に使用する方法があります。
発作の頻度が多くなければ、あやしかったらすぐに座薬を使うという
やり方でもよいです。
嘔吐したときはよほどのことがないかぎり、もう1回飲むのはやめたほうが
いいです。
血中濃度が上がりすぎることがあります。

 

     Q
 

 風邪薬、もしくは他の薬で抗てんかん薬と一緒に飲んでは
いけないものはないですか。

     A


 

 抗ヒスタミン薬(鼻水止め、アレルギーの薬)は一緒に内服をしないほうがいい人がいます。

 

     Q

 

 てんかんの発作が終わった時、しゃっくりが出る、あくびが出る、
手足の冷感、嘔吐感がある、などの症状がでることがあります。
これは自律神経系に影響が及んでいるということでしょうか。

     A


 

 そのとおりです。
手掌の汗、四肢冷感などは、よく経験されます。


 

     Q


 

 強い発作が起きたとき、それを止めるため、座薬をもらっており、
状態を見ながら使っていますが、他の人(他の施設)に使ってもらう
時の標準的な使うタイミングというのがあるのでしょうか。
 

     A




 

 個人によって、異なると思います。
例えば、すぐに重積になる人は直ちに使用すべきですし、
短い発作が日ごろから多い人はその頻度、程度が通常で
ないと思われるときに使用すべきです。
また、外出先とか集団行動の中では早めに使用するべきと思います。

 

     Q

 

 発作は子どもの年齢に関連して出なくなったり、
強くなったりすることがあるのでしょうか。
思春期頃に発作が少なくなったり、その頃に
多くなったりすると聞いたことがありますが。

     A



 

 そのとおりです。人間の脳も年齢とともに発達しています。
そのため、ストレスに対して強くなったりします。
一方で、子供の頃ならそうでもないことがストレスになることがあります。
その辺の兼合いも関係していると思われます。
てんかん自体も年齢依存性のあるものがありますので、ある年齢域で特徴的
な発作が見られ、それを越えるとまた違う発作に変化することがあります。

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