シセツの現場から     (その2)

 

◎今回のテーマ

 白木先生から、2月にキャンプをやるとの話を聞きました。そこで今回は、学生さんに
向けて
『キャンプで子どもと仲良くなる方法』 について、書いて見るつもりです。と言っても僕は成人の方とのかかわりが多いので、子どもと接する機会は少ないのですが、役
に立たないことはないと思います。
    (何か自信なさげな表現でしょう? そうです。ほんとに役立つかいな? と
      思っているのです。)

僕は、このホームページを自分の考えをまとめる場として利用することにしました。
勝手に。
これから
社会に出て行く学生諸君!現場で必要なことは、学生時代に学んだ知的インプットの作業ではなく、知的アウトプットの作業なのです。詰め込んだ知識・経験を自分の言葉として表現し次の仕事にどう活かしていくのかが重要なのです(と言い切れることばっかりでもないんだけど)。

 ちょっと熱くなってしまいました。おじさんになってくると、小言が増えていかんですな。  では、本題に入ります。


◎担当するお子さんの個性を知りましょう
   (まず、障害特性)

 しゃぼん玉の会に参加するお子さんは、何らかのハンディを持った方です。診断名として 「ダウン症(候群)」 とか、「自閉症(候群)」、「精神発達遅滞」 などなどいわゆるショウガイがあるはずです。現場のプロとして仕事をする人の中にも、このショウガイをその子のせいにして 「この子は自閉症だから○○ができないんだよね。」 などという人がいます。
 
そういうレッテルを貼られることで得するお子さん(もちろん家族の方)はいません。

 
私達がやるべきことは、レッテルを貼ることではなく、お子さんを良く知るための第一歩として、その障害特性を知ることです。

 ノースカロライナ大学のメジボブさんは、自閉症を理解するには、自閉症の文化を知ることだ。という表現をされています
  (もっと詳しく知りたい方は、TEACCHのキーワードで検索してください)。
文化が違えば暮し向きや価値観は当然変わってきます。お子さんがキャンプの中で見せる、一見不適応な行動も、実は意味があったりするのです。 「〜ができない。」 
「〜をやってくれない。」 と思うことが多いでしょうし、それが当然だと思います。その後の1日の反省の際、 「なぜ自分はそう思ったのか。その考えは妥当だったのか。」 を仲間と議論しながら自分の価値観について考えられたらいいですね。

 これらのことは、キャンプにすぐに役立つわけではありません。しかし、障害特性が分かってくると 「なるほど、この行動にはこんな意味があったのか!」 と徐々にわかってきます。偉そうなことを言っている僕もいまだにこの繰り返しです。この楽しみを味わうと、お金や地位、名誉とはあまり縁のないこの業界から抜け出せなくなるので、ご用心。


◎お子さんの好きなこと・嫌いなことを知りましょう

 とにかく家族の方に、好きなこと・嫌いなことの情報をたくさんもらいましょう。そのなかで、「今、こんなことにちょっと興味が出てきたのよ。」なんていう情報があったらラッキーですね。
 
計画の中に、好きな活動→興味が出てきた活動→好きな活動といった具合にサンドイッチしてみると、案外うまくいくかもしれません。
 
はじめに情報をもらえ、といっておきながら何ですが、家族の方の情報は全てが合っているというわけではありません。苦手といわれていることでも、ボラさんとならうまくいくってことは、案外多いものです。嫌い、苦手といわれている事でも、白木先生に相談したうえでちょっとだけ試してみてください。


◎言葉がけひとつで変わってきます

 結論から言います。言葉で教え諭そうとするのはあまり有効ではありません。

 
合図は「短く」「ゆっくりと」「低い声で」「小さな声で」「具体的で」「肯定形で」というのが基本です。
 
 
たとえば、あるお子さんが上ってはいけないところに上っていたとします (そこが危険な場所であったら、すぐに降ろして 「だめ」 と叱るべきですが)。
あなたはどうしますか? 「危ないからだめ」 「いつも言ってるでしょ」 
「何回言えばわかるの」 などは、よく使われる言葉です。これらの言葉は抽象的で、いま何をすればよいのかが具体的ではありません。
 
具体的な言葉は「おりて」の一言だけです。ゆっくりと近づいていって、「おりて」 と声をかけてください。そして、降りてくれたら 「そうだね。えらいね。」 と誉めてあげてください。

 また、すこし別の話になりますが、お子さんが手をひらひら・ジャンプ・身体をゆするなどの動きをしている場合は、その動きが終わるまで待ってから合図を出してください。それは...、明確な説明はできません。
相手を認めるという視点で考えれば、「その動きの意味を僕はわかっていない。でも、何か意味があるんだろうから、終わるまで待ってるね。終わったら僕の話を聞いてくれるかな。」 といったところでしょうか。

 僕たちは、日本語をという言葉を使ってコミュニケーションをしています。しかし違う文化の人には、通じません。言葉にとらわれず、身振り・手振りを使って相手がわかってくれるコミュニケーション手段を探してみて下さい。


◎もの(グッズ・アイテム・ツール)ひとつで変わってきます

 あまり英語が得意でないので、グッズ・アイテム・ツールなんていう言葉の正確な意味を知りません。
言葉がけの続きになりますが、要するに
お子さんが自分で動ける(自発的な活動なんて言い方をしますための”もの”を探す。ということです。

 食事や入浴、あるいはレクレーション等の合図をお子さんはどうやって理解していますか。あなたが手を引いてその場へ連れて行ってあげる事が多いですか。もしそうだとしたら、言葉がけと一緒に”もの”を渡してみてください。
 ご飯へ行く時、「ご飯(食堂)に行くよ。」 と言って、お箸を渡す。お風呂に入る時、
「お風呂に行くよ。」 と言ってタオルを渡す。 「朝の会に行くよ(背振の青少年の家なんかだとありましたよね、集会が)。」 といって、パンフレットなどを渡す。
など
その子のレベルに合った”もの”を用意して、繰り返しやってみると、動きが変わってくるはずです。
 いままで、なんとなーく食堂へあなたに手を引かれていっていたお子さんが、部屋でお箸を渡されたら自分で
食堂まで行った。なんてことを考えただけで感動しませんか。


◎活動する場所の構造を把握しておいてください

 一番大切なのは、トイレの場所です。 
 次には、一人になれる場所、静かな場所です。
 
お祭り大好きなお子さんであれば、二番目の配慮は必要ありません。
ちょっと集団が苦手だな、というお子さんに配慮してあげたほうが良い場合があります。皆で集まる場所の端っこにスペースだけは作ってあげておく。まずみんなでやってみて、
ちょっと苦手そうだなと思ったら、その場所に誘導してみる、といった具合に。
 
僕達が成人の方々とレストランに行く場合、隅っこのテーブルをお願いします。そしてその中でも、刺激が多いことが苦手な方には、店内に背を向けられるような場所に座ってもらいます。
 
無理に集団に合わせるのではなく、どの場所だったらその活動を楽しめるかを考えてみてください。


◎距離間、これって案外重要です

 一見、人とのかかわりを避けようとするお子さんがいらっしゃいます。
 その子達は、人が嫌いなわけでは決してありません。
 自分の空間を大事にする人なのです。
 ですから、急に接近してはいけません。
 距離
としては、そうですね1メートルくらいの距離間が必要です。
  (僕はプロなんで、1メートル20センチくらい
とっちゃいます。ちょっと自慢。)
 
 
自分の思いが伝わっていないと思う(実は伝わっていたりするんですが)と、どんどん接近したくなります。動きの激しいお子さんだったりすると、手をつないでいるか追いかけているか、なんて経験はありませんか。
  距離をおくことは、非常に勇気がいることですが、離れることでわかることはたくさんあります。恋愛だってそうでしょう。自分の距離間
はどのくらいか、一度測ってみることをお勧めします。はじめから1メートルの距離を取れていた方、もしいたら連絡ください。福岡に帰った時には、何かおごりますよ。  


◎1日の反省会、大切にしましょう

 しゃぼん玉の1日反省会は、今でも白木先生の 「それでは、今日の反省を...(ボソボソとつぶやくような口調で)」 から始まっているんですか。
 反省会では、皆さんできたこととできなかったこと、明日への決意とまではいかなくても、そういった内容のことを話すと思います。

 
その中で、「〜ができた(できなかった)。」 に加えて、「〜○回目でできた。」
 「〜○分間は出来ていたけどその後ダメだった。」 という具合に、時間や回数をカウ
 ントしてみてください。

 そうすることで、今日は3回だったから、明日は3回以上を目指してみよう、といった具体的な目標ができてきます。実際やってみると、そう簡単なことではありませんが、カウントできるようになってくるといろいろなことが見えてきます。
 

◎ここまでできたらほとんどプロです

 保育・教育・福祉の業界で、ここまでのことが出来ている方を、実はあまり知りません。ですが、学生さんでは難しいというレベルではないと思います。
 こういった視点は、どの分野で仕事をする場合でも活かされると思います。しゃぼん玉
が継続しているのもあなた方、学生さんの力があってこそです。僕は遠方からこんなことくらいしかできませんが、今後の活動に少しでもお役に立てればと思っています。
  がんばってください。
 

 

 

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