シセツの現場から  その(1)

 

 ◎はじめに

 白木先生から「ちょっと書いて〜。」とお願いされてからはや半年。
引き受けてはみたものの...。本当にすいません。
今後は月1程度で、と思ってはいます。

  自己紹介が遅れました。
  私、横浜市にあります
『社会福祉法人横浜やまびこの里 東やまた工房』
自閉症の方々の援助サービスを生業としています 
長瀬と申します。
 シャボン玉の会とは、設立の当初より数年間(まだ福岡で仕事をしていたころ)
関わらせていただきました。
といっても、たまにキャンプに参加する程度でしたから、大した
事はやってません。
ホームページを見て、いまだに継続しているシャボン玉の熱意に感激しています。
そんな皆さんの仲間に加えていただけたらと思い、遅ればせながら参加した次第です。ハイ。

 

◎法人の説明(簡単に)

 うちの法人は、横浜自閉症児者親の会が母体となって創られた施設で、いわゆる
通所更生施設(東やまた工房)と入所更生施設(東やまたレジデンス)が中核を
なしています。
その他、就労援助部門・作業所5箇所・グループホーム5箇所・クリニックなどなど
「自閉症という障碍を持つ人々が、地域の中で豊かに暮らせるように」 するための
事業も展開しています。
 詳しくは、うちのホームページをご覧下さい。
      http://www.yk.rim.or.jp/~yoshinob/webdata/sato.html
 

 ◎僕ができること

 僕は、一介のシセツ職員です。何の肩書きもありませんし、アカデミックな話がで
きるわけでもありません。ただ、現場の最前線にいることだけが強みです。そこで
感じること、考えること、失敗したこと等をお伝えしながら批判・アドバイスをいただけ
たらと思います。
 まず、1回目の今日は5年前にさかのぼって、
東やまたレジデンス立ち上げ
ついて書きたいと思います。

 

◎レジデンス奮闘記

 横浜市福祉局に勤務していた5年前、 「やまたが入所施設を作るらしい。」 という
情報を耳にしたのが僕の悪夢の始まりだった。なんとなく、 「スタッフ募集するんで
すか。」 と電話をかけ、その成り行きで 「一度遊びにきたら。」 と誘われ、管理職
2人と会った。2時間ほど話しただろうか。役所ではそれなりに自信を持って仕事をしていた僕を、ふたりはあっけなく論破してこういった。
「勉強したいんなら雇ってやるよ。」

 あの時にもっと冷静な判断力があったならやり過ごせたのに。
なぜ 「勉強します。」 といったのだろう。今考えても悔やまれるひとことだった。

 僕が入社した1月には、5月の”開業”に向けて、準備が続いていた。
施設の建物は、それぞれの個室があってリビング・ダイニング・バス・トイレ・キッチンがついた4〜7LDKとなっている。
それが7つ集まって1つの施設というわけである。
それぞれの建物のレイアウトは、設計屋さんと職員が1チームになり、勝手に作ったもんだから配管工事・電気工事のおじさん達は、 「水を流す傾斜がつけられない。」「配線が入り組んじゃって。」 などなど嘆いていた。

 入所調整委員会(全国どこでもこの呼び方なのでしょうか。とにかく入居者40名を決める会です)が終了し、入居者が決定。
そこからは、もう大変です。
ひとりひとりの事前情報収集に走る走る。
ほとんどの方が 「強度行動障害」 なんていうレッテルを貼られている人ばかり。
 「おまえらそれでもプロか!」 といいたくなるような職員、 「うちにきません?」 と誘ってみたくなる職員(実際誘ったが)、困り果てている家族の方々と話し合いながら、時間だけが過ぎていく。

 当時の僕には、何をどうしていいのかさえわからず、
「何がわからないのかわかりません。」 状態だった。
今当時を振り返って 「こうしとけば良かった。」 と言えることは、

 
@その方と徹底的に向き合うこと
  (何が得意で、何が不得意なのかを手始めに、情報収集を行うこと)。
 
Aそしてそれが、客観的な事実に基づいたものであること
  (だいたいこんな感じ、ではプロの仕事とは呼べません)。

 調査票なんてものには必要な情報は載っていない
  (なんていったら福祉事務所に怒られますね)。

行動障害などと呼ばれて一番困っているのはご本人。
なのに、遠目から見ていて「大変そう」と言ってたって、何の解決にもならない(自戒)。

 そうこうしている内に、ゴールデンウィーク。
前年の今頃は大型連休だったなぁ、と思いながら朝までミーティングの日々であった。
前日の夜は、職員全員で入居者の来所時間と配慮すべき事項についての打ち合わせとシュミレーションを実施。
(あっそうそう、いい忘れていました。初日に40名全員を仕事の場面から受け入れたのでした。)

 そして当日、40名の方がほぼタイムスケジュール通りにみえ、通所者とあわせて80名の大所帯となったのであった。ボスからの指令は2つ
   「ひきつった顔で利用者と向き合うな。」  「走るな。」 
今思うと、的確な指示である。職員の不安げな顔・先の読めない動きはお客さんを不安にさせるということか。

 大きな混乱もなく、仕事を終えた皆さんはレジデンスへと帰宅となった。事前に自分の部屋を確認し、自分で荷物の搬入もしてもらっていたため、ほとんどの方は自分の部屋でくつろいでおられた。
 
自閉症の人々にとって、納得する・理解するというのがいかに大切なことかを実感した瞬間であった。(彼らは、変化が嫌なわけではない。変化したことが知らされず、わからないからパニックという手段を使って「わかんねぇよ。」と訴えているのです。)

 入浴、食事も終わり午前0時をまわってミーティング。
それも終わって午前2時。
そろそろ休もうかと思っていたところ、aさんが窓の外を指差し「かかかか。」との訴え。
この方、職員を殴るは、ガラスは割るわで、前の施設をタイジョーされられちゃったわけで。
何かを訴えつづけるaさんを前に、やり取りを試みる。
いろいろな推測をする中、近くのコンビ二に行きたいのでは、との結論となる。
暴れられると困るので、職員3人が付き添いコンビニへ。
チョコ(だったかな)を買った(もちろん食べた)aさん、何事もなかったように就寝。
次の日からは、コンビニカードと飲み物・食べ物カードを用意し、「好きなものを1個買う」ルールでお互いの合意をみた。

 2日目の夜、21時には静まり返るレジデンス。入居施設を経験していた職員と「何でこんなに静かなの。」と言い合いながら、「俺達がんばったもんね。」と誉めあった。

それから、数日して久しぶりに帰宅(労働基準法に触れるのでその日数は書けません)。長女がにこっと笑ってくれて、「忘れられてなかった。」と一安心。そしてその口の中には、前歯が2本生え始めていたのだった。
「この子、前歯がはえてきたんだね。」と言おうとして、その言葉を呑み込んだ。「なにいってんのよ!」と怒られる姿が目に浮かんだから。

 

◎さあ、どうしましょう

 1回目、こんなんなってしまいました。こんなんじゃつまんないですよね。次からは気をつけます。どんなのがよかですかね。もっと系統だった話、こだわりとかパニックとか実例を元にやった方がよかですかねぇ。ご意見をお聞かせください。できる範囲で前向きに考えます。ありがとうございました。

         

 

 

     白木より長瀬さんの紹介

 長瀬さんは私より10うん才くらい年下だと思います。
福岡の大学を卒業した後、某大学の大学院の
修士課程を卒業されました。その後、私の職場に
誘ったのですが、なんと横浜に行っちゃいました。
でも、またホームページへの投稿という形で
お世話になってます。第2弾も期待しましょう。
 
  (推薦のサイトでリンクさせていただいている日本自閉症協会京都府支部の
  講演会記録にも東やまた工房、東やまたレジデンスの記録があります。)



 

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