一体どれくらいタクシーに乗っていたのか、
街を離れ辺りはすっかり日が落ちていた。
「ここら辺でいいよ。」
彼はそう言ってタクシーを止めた。
かなりの間タクシーに乗っていたのだから
金額もかなりの額になっていると思ったが彼は、
すっと財布の中から数枚のお札を取り出した。
「さぁ、ついたよ。」
そう言って彼は、運転手が左側のドアを開ける前に
右から回ってドアを開けてくれた。
「あ、どうもすみません。」
彼はにこっと笑って、
「そんなかしこまらなくてもいいよ。」
そして彼はわたしの前へ、さっと手を差し出した。
わたしがその手を見て、彼の顔を見上げると、
笑顔でその手を差し出している彼にわたしは負けそうになった。
そして、ふいにKIYOSHIの顔がわたしの脳裏をかすめる。
目の前の彼に心が揺れるわたしは気持ちを落ち着かせ、
彼の手をとった。
「ありがとう・・・・。」
タクシーから降りると、
そこは小高い丘に建ったペンションの前だった。
「あのここは?」
「ここはねぇ。うちの別荘。」
やっぱりお金持ちはいるものだと考えていると、
「どうしたの?大丈夫?」
彼は優しい瞳でわたしを見つめていた。
そして、彼に手を引かれわたしはそのペンションへと入っていった。
[2000/01/13 02:49:24]