有川 浩 04


図書館戦争


2011/05/08

 有川浩さんの『図書館戦争』シリーズの人気は承知していたが、初版刊行当時は触手が伸びなかった。文庫化を機に、ようやくこのシリーズに挑むことにした。

 昭和最終年、公序良俗を乱す表現を取り締まる「メディア良化法」が成立。検閲の権限や基準が曖昧なこの法律に対抗し、図書館法第四章、通称「図書館の自由法」が成立。そして、両法試行から30年後の現代、正化31年。

 メディア良化委員会に唯一法的に対抗できる図書館は、表現の自由を守る最後の砦。良化特務機関と図書館、両組織の抗争は激化し、互いに武装を強化していく。最終的に、図書館の自衛隊たる図書隊が設立されたのだった。

 かなり端折ったが、要するに図書館が武装しているという一見すると荒唐無稽な設定である。主人公の笠原郁は、高校時代の経験から図書隊を志す。数少ない女性の防衛員である郁は、持ち前のガッツで図書特殊部隊に配属されるが…。

 序盤は訓練に励む様子が描かれ、同時に主要な登場人物を読者に印象づける。隊長の玄田、上官の堂上、小牧、郁の寮のルームメイトで図書館員の柴崎、同時に配属された手塚…。詳しくは触れないが、全員見事にキャラが立っている。

 不器用ながらに事務も必死にこなす郁。一方、図書館では何やら不穏な動きが…。降りかかる難題や良化特務機関の襲来に、揺さぶられる図書館。実は、読んでみると戦闘シーンがメインというわけではない。図書特殊部隊が、あくまで本を、利用者を守るために奔走する姿に、読書好きならば共感できるだろう。特に愚直すぎる郁には。

 基本はエンターテイメントだが、現実社会に通じるテーマを扱い、読書好きのツボが刺激される。あとがきで、有川さんは「笑っていただいて何ぼの本」と述べているが、現実に「東京都青少年健全育成条例」の改定案が成立した現在、すべてを笑い流せるか。

 有川作品にはお約束の恋模様もあるが、その辺は読んで確かめていただきたい。このシリーズは全部で6作あり、本作はシリーズ全体ではまだ序章なのだった。



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