有川 浩 09 | ||
図書館革命 |
いよいよ本編完結となる第4弾。図書隊と良化特務機関の長年の抗争に、どのような決着が図られるのか? そしてあんなことやこんなことは?
敦賀の原発を狙ったテロが発生したが、未遂に終わる。図書隊には直接関係ない事件と思われたが、犯行の手口が人気作家・当麻蔵人の著作に酷似していたことから、良化特務機関が身柄確保に動く。そうはさせじと当麻の保護に奔走する図書隊。
当麻がメディア良化委員会の手に落ちてしまえば、これを前例としてさらなる言論狩りに走るのは目に見えている。何としても当麻を守り通さねばならない。ここで一つ注目したいのが、作中でも指摘された事実である。本を読まない人にとって、この問題は他人事でしかない。現実にこういう事態になっても、無関心な人は多いに違いない。
一般人の関心を引くにはテレビしかない。そこで法務省や政府内の検閲反対派も巻き込み、各局が連携してのリレー報道や、違憲訴訟準備が進められる。それにしても、これは予想外の展開だったなあ。どう予想外なのかは書けないが。やはり曲者だ。
そして、最後の秘策に打って出る図書特殊部隊。良化特務機関も網を張って待ち構える。「秘策」の発案者が郁であることくらいは書いてもいいだろう。大雨の都心を駆ける逃避行の緊迫感は、有川さんの体当たり取材の賜物だ。
最後までノンストップの展開の中、恋の行方からも目が離せない。もう伝説の某大映ドラマの世界である。ベタベタである。本来こういうのは苦手である。でも許す。ここまで読んできたら許すしかないではないか。若い世代は大映ドラマなんて知らないだろうが…。
図書館戦争シリーズに出会えてよかった。エンターテイメントに徹しつつ、現実社会への示唆も与える。軽いようで深いし、敷居は高くない。キャラクターの魅力や恋愛模様が人気の大きな要因だとは思うが、それだけだったら僕には読み通せなかっただろう。
ところで、シリーズ本編の文庫版全4冊には、有川浩さんと故児玉清さんの対談が分割掲載されている。NHK BSの「週刊ブックレビュー」で司会を務めた児玉さんも、本編文庫版完結を祝福していることだろう。残る別冊2作は気楽に読めるかなあ。