有川 浩 21


県庁おもてなし課


2011/04/18

 本作の冒頭にある通り、高知県庁には実際に「おもてなし課」が存在する。本作は、高知県と高知県出身の有川浩さんが手を組み、おもてなし課をモデルに描いたコラボ作品だが、高知県に限らず、日本全国の地方を応援する作品になっている。

 高知県庁観光部に発足したおもてなし課。知事からは独創的な企画を立案せよと訓示されたものの、腰が重い面々。手始めに、県出身の有名人に観光特使を打診した。県内観光地の無料クーポン付き名刺を用意し、配布してもらおうというのだが…。

 若手職員の掛水に、打診した1人である作家の吉門喬介から電話が入る。曰く、後追いなのに個性がない。約1ヵ月後、再び電話。曰く、打診して1ヵ月も音沙汰なければ、普通話が流れたと考える。それが民間の感覚だ。実際、有川浩さんも高知県から観光特使を依頼されたが、その後音沙汰なく、話は流れたのかと思ったそうである。

 成り行き上吉門との窓口になった掛水は、吉門のアドバイスに従い、外部の人間としてアルバイトの明神多紀をメンバーに入れる。そして、元県庁職員で、かつて『パンダ誘致論』を熱心に唱えた清遠和政に接触を図ろうとするのだが…。

 過去の経緯から、清遠の娘の佐和は県庁に強い嫌悪感を抱いている。清遠と吉門にも何やら因縁があるらしい。そしてお約束の恋模様…と、その辺の事情は秘密。

 清遠が掛水と多紀に伝えたかったことは、全国に共通する。住人が気づかない地方の魅力。何もない? ならば逆手にとればよい。ゆずによる村おこしで全国的に有名になった馬路村が出てくるが、本作を読んでいると本当に高知県に行きたくなる。

 突然の理不尽にも負けず、おもてなし課は使命感に燃えていく。本作は地方の魅力を再発見させてくれると同時に、おもてなし課のメンバーの成長記でもある点も見逃せない。何より、登場人物たちの地元を愛する気持ちが全編に溢れている。

 地元愛小説にして恋愛小説。甘いとか言うなかれ。今こそこういう作品が必要だ。



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