綾辻行人 06 | ||
殺人方程式 |
切断された死体の問題 |
本作は、綾辻作品としては稀な刑事もの(?)である。カッパ・ノベルスというミステリー界の老舗ブランドの要求に沿った結果とはいえ、綾辻作品に刑事が登場するのは、どうも違和感があるような…。
警視庁刑事である明日香井叶と、その双子の兄である響。名前の読みが同じなら、姿形もそっくりの二人が、新興宗教団体の教主が殺害された事件を追う。ちなみに、叶の奥様である深雪は、二人を区別するためにカナウ君、ヒビク君と呼んでいる。
教団本部ビルで儀式中だったはずの教主は、なぜか別のビルの屋上で死体となって発見された。しかも、頭部と左腕が切断されている。なぜ、犯人は死体を切断しなければならなかったのか。この切断理由が、本作の焦点である。
文庫版解説の中で、由良三郎さんは、これほど説得力のあるバラバラ死体は聞いたことがない、と絶賛している。確かに、頭と腕の切断は真犯人にとって必要なことではあったのだが…しかし、やはり〇〇を使った方が簡単だったんじゃないかと思ってしまう。もう一つの目的にしても、いくらでも別の方法があっただろう。
結果として、真犯人は死体を切断したことから足が付いてしまう。まあ、真犯人の些細なミスから探偵役が真相を暴くのが、本格のお約束ではあるのだけれど。
色々な意味で、本作には無理を感じてしまった。やはり、綾辻作品には俗世間から隔絶された舞台が相応しいと思うし、そのような舞台でこそ綾辻さんの真価は発揮されると思う。それは僕の勝手な思い込みに過ぎないだろうことは、百も承知だが。
本作においてもフェアプレーの精神が貫かれていることは、付け加えておこう。ところで、本作の舞台になっているM市とS市は、やはり町田市と相模原市かな?