遠藤武文 06 | ||
天命の扉 |
デビュー時の地雷路線(失礼)から、比較的オーソドックスな作風になってきたと思っていた遠藤武文さんだが…真夏に超弩級の地雷作品を届けてくれました。
長野県議会の議会中、突如照明が落ちた。闇に包まれた議場に破裂音らしき音が響き、非常灯が点灯すると、質問に立ったところだった片桐議員が、胸から血を流して倒れていた…。この間に議場を出た者は誰もいない。
やがて、県庁と同居する長野県警本部から、捜査員が乗り込んできた。議員はもちろん、県知事、報道関係者、傍聴席の一般市民ら全員が容疑者。速やかに事情聴取が行われるが、犯行時は暗闇だっただけに証言は曖昧で、凶器も見つからない。
どうですかあなた。県議会開催中の議場で、前代未聞の殺人事件発生ですよ。お膝元で殺人事件を起こされた、長野県警の沽券にかかわる一大事。シチュエーションの荒唐無稽さはこの方本来の持ち味なので、深く考えてはならない。問題は背景だが…。
現場に残された紙片やネット上に、折句の形でメッセージが。いいですよお、言葉遊びは嫌いじゃないですよお。そのメッセージは、かつて捜査一課の城取が担当した強盗殺人事件との関連性をにおわせていた。上がいい顔をしない中、洗い直す城取。
ところで、なぜ長野県が舞台なのか? 帯には思い切り書いてあるが、善光寺が関係しているとだけ書いておきましょう。この動機は長野県でなければ成立しないのである。さらにもう一つの惨劇が発生し、真犯人は警察を、長野県を揺さぶりにかかる。
トリック自体はどうということもないが、捜査の甘さを問い詰めたい。手荷物検査くらいしないのか? 以下、未読の方は一応反転しないでください。自分で○○を○○するために○○○○を持ち歩いているなんて、どう考えても不自然だろうがっ!!!!!
そして動機だ動機。石持浅海作品をはるかに上回る、共感しようがない理屈。そんな妄想のためにこんなに殺したのかよぉっっっっっ!!!!! まあ、若き県知事の命を賭した感動的演説に免じて、許してあげようか。許せるかぁっっっっっ!!!!!!!!!