江坂 遊 05


鍵穴ラビリンス


2008/10/14

 「ご存じですか? 物語は圧縮すると結晶になるのです」と裏表紙にある。実に的確な一文だ。早くも登場した江坂遊さんの最新ショートショート集は、何と一挙56編を大放出。アンソロジー異形コレクションに収録されたものが26編。書き下ろしも26編と多い。

 今回は、ショートショートよりもさらに短い、わずか数行のショートショートショートとでも呼ぶべき作品が4編ある。小説はどこまで短くできるのか。ケータイ小説が持てはやされる昨今だけに、携帯の画面に収まる作品がいくらでも書けそうである。

 以下は各編の一言コメントである。例によって、特によかった10編を星で示す。ブラック系作品、ホラー系作品に星が集中してしまった。

I 鍵穴迷宮

 鍵穴迷宮 … 蛙の子は…。
 つばさ君 … サッカーの話じゃありません。
 バブリングメモリー … 金融不安のご時世ですから。
 火星ミミズ … そこは再生できるのか?
 帰缶 … 変わり果てた姿で…何に?
 秀逸のメイク … 真夏の不可能犯罪の真相は。
 静かな湖畔にて … 有名な輪唱は関係ありません。
 留奈 … 打倒、『リング』シリーズ。
 晴れない硝煙 … 『セーラー服と機関銃』ならぬ…。
 ジルマの桟橋 … 豪華客船ツアーはもう古い。
 最終楽章 … 絵空事と言い切れるか。
 美しく仕上げるために … フラワーアレンジメントの意外な一面。
 早すぎる収穫 … これが本当の「青田刈り」…。
 シグナル … 赤信号のままでいて。
 高層階にて … 2001年には発表できまい。
 首茸 … 文字通り首ったけ。
 インディアン・ポーカー … 飲みすぎ注意。
 ふた首穴のセーター … 要らない。
 アヴァターラ … 一生添い遂げることでしょう。

II 新薬のおかげ

 新薬のおかげ … おしどり夫婦なんて嘘だ?
 怪獣玩具と僕 … たかがおもちゃ、されど…。
 モンクE氏の悩み … くだらないけど好きだな。
 ホクロスイッチ … ちょうどその辺にホクロが…。
 女性専用車両 … 男性専用車両も作るべきだと常々思う。
 風の秘密 … 新手のナンパかよ。
 泣き止まない理由 … ベビーカーに頼る親は多いが。
 女の涙は … 恋に落ちて。
 黒い腕時計 … 逆エコドライブかよ。
 ルシフェルのレストラン … やけに冷静だな…。
 駐車場にて … 原油高なんか怖くない。
 電気コンセント … 本望だっただろうか…。
 鉄棒 … 努力は実るさ。
 二人ジャケット … これまた本望だっただろうか…。
 ヨーグルト … 本場ブルガリアもびっくり?
 二段寝台 … 子供の頃は憧れたものだ。
 小さな僕の町 … 東武ワールドスクエアもびっくり。
 白いカスタネット … 誰が赤と青って決めたんだろうね。

III 浮人形

 飛蝗の爺さん … その木何の木気になる木。
 缶詰28号 … 君こそヒーローだ。
 トロピカルストローハット … 二度と帽子がかぶれない。
 マイサーカス … ノミのサーカスというのは聞いたことがあるが。
 キネマの夜 … シネコンではなく、昔ながらの映画館を舞台にしたい。
 深夜の動物園 … 真夜中は別の顔。
 会員特典 … 資格なしで結構です。
 老機関士の話 … そんな余生も悪くはない?
 フルーツバスケット … 何てハイリスク、ハイリターンな。
 ふたりの遊園地 … これが本当の絶叫マシーン…。
 トランペット … そりゃ驚くわ。
 花相撲 … 妻が一枚上手だった。
 竹の蛇 … そもそもお土産としてセンスを疑うぞ。
 瑠璃色のびー玉 … 一休さん並に臨機応変。
 ゆず湯 … いい湯だな、アハハン(嘘)
 犬と遊園地と打ち上げ花火 … 名犬ラッシーもびっくり。
 砂書き … 粉骨砕身。.
 浮人形 … ヴァーチャル美少女かよ。

 「あとがきにかえて」最後に収録された「エッサカ、ホイ」は、師匠である星新一さんへの追悼文である。リズミカルに洒落を効かせながら、固い師弟関係を感じさせる味わい深い1編だ。星さんの意志が確かに受け継がれたことは、読めばわかる。



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