畠中 恵 07


おまけのこ


2009/04/13

 何だかんだで読み進めている、しゃばけシリーズ第4作。水戸黄門のような安心感がありながら、少しずつひねりを加えてまんねりにならない工夫をしているように思う。

 「こわい」という言葉は、「孤者異(こわい)」という妖から出たものだという。人はもちろん、御仏にも同じ妖にも嫌われるという孤者異。そんな孤者異が人の切なる願いに付け込んできた。可哀想な身の上には違いないが、一太郎にも救う術はない。孤者異に安住の地が見つかる日は来るのか。親しみやすい妖たちが多く登場する中、異例の1編。

 「畳紙」。前作『ねこのばば』の「花かんざし」に登場した厚化粧のお雛が再登場。一度に白粉の袋を使い切るほど厚化粧をするようになった理由とは。掛け軸の付喪神・屏風のぞきが、お雛の部屋まで出張するのが興味深い。いいところあるじゃない。

 「動く影」は、一太郎の回想の形で、幼い頃の冒険を描く。仁吉も佐助も長崎屋にまだいないころのこと。当然当時から病弱なのだが、その分知恵を働かせて影女の謎に迫る。幼なじみの親友・栄吉との絆は、この一件で深まったのだろうか。

 「ありんすこく」。廓(くるわ)になど縁がなさそうな一太郎が、吉原の禿(かむろ)を足抜けさせて、一緒に逃げるという。廓の掟は厳格で、逃亡など許されない。さてどうする? 理由を聞いた仁吉と佐助も結局駆り出され…。一太郎が考えた手段に苦笑するが、結局そんな荒技に出るなら最初からそうしろって。本作中唯一、シリーズの王道パターン。

 表題作「おまけのこ」。長崎屋では、高価な真珠の玉を盗もうとした犯人探しをしていた。その頃、鳴家(やなり)は…。一太郎の推理より、愛すべき妖・鳴家(やなり)の大冒険がメイン。危機一髪の連続だが、ちっともはらはらしないのはなぜだ。最後に、長崎屋の鳴家を区別した方法とは…。一太郎には鳴き声でわかるらしいが。

 「きゃらきゃら」とか「きゅわきゅわ」とか、鳴家の鳴き声を表す擬声語が、不思議と味わい深い。鳴家がいなかったらシリーズの魅力は半減するだろう。



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