畠中 恵 16


こいしり


2011/11/25

 『まんまこと』に続くシリーズ第2弾。念のため、前作を未読で読む予定のある方は、以下の文章には目を通さないことをお勧めします。

 表題作「こいしり」。やんちゃな町名主名代・麻之助だが、前作の結末でにおわせた通り、祝言をあげることになった。ところが、婚礼の席で悪友にして盟友・清十郎の父、源兵衛が卒中で倒れ…という、いきなりえぇぇぇぇぇ!!!!! という展開。源兵衛のたっての願いを受け、婚礼は延期して奔走する2人。一応めでたし? と思ったらえぇぇぇぇぇ!!!!!

 第1話からまさかの結末の後、「みけとらふに」。序盤から猫好きには堪らん。化け猫の噂が流布し、始末されかけている子猫を救ってほしいという、少女の切なる願い。噂を追ううちに、怪しい一味の影が…。こういう話に引っかかる人は今でも多い。

 シリーズ中でも変則的な「百物語の後」。季節外れの百物語の裏に潜む悪事。麻之助・清十郎・吉五郎の活躍で、見事に暴かれたはずが、あれ? それぞれの記憶が食い違っている????? ……。どちらかというと『しゃばけ』シリーズっぽい。

 続く2編は、本作中では少数派なシリーズの王道パターン。「清十郎の問い」。自身番に届けられた神田明神のお守り。ところが落とし主が2人現れた…。「今日の先」。真面目一筋に生きてきて、余命幾ばくもない大岩屋の主が、遊んでみたいという。ところが、姪はやめさせてくれという…。意外性もさることながら、麻之助の裁きに唸らされる。

 と、ここまで読んできて気になったのが、麻之助の妻となったお寿ずがさっぱり登場しないこと。それもそのはず、麻之助は妻そっちのけで清十郎たちと出歩いてばかり。これではお寿ずも不満が溜まるのではないかと思ったら…。

 最後の「せなかあわせ」で、いきなり麻之助に三行半を突きつけるお寿ず。今まで放っておいたことを埋め合わせるように、お寿ずと連れ立って町を歩く麻之助。どうしてそんなに深入りするのかと思ってしまうが、夫婦の距離は縮まったのか?



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