畠中 恵 17


ころころろ


2011/12/05

 例年7月に新刊が出て、12月に2作前が文庫化される畠中恵さんのしゃばけシリーズだが、今年で10周年を迎えた。おめでとうございます。さて、第8作となる本作『ころころろ』では、病弱な一太郎に追い討ちをかけるように、目が見えなくなってしまう。

 最初の「はじめての」は、一太郎が十二の頃の話。沙衣が言うには、おっかさんの目を治すのに七つの宝が必要なのだというが…。真相を知ってみれば家族の問題であり、現代的なテーマでもある。そして、この1編が後の伏線になっているのである。

 一太郎の時間で現在に戻り、「ほねぬすびと」。序盤でいきなり一太郎は光を失い、長崎屋は大騒ぎ。しかし、そんなことに関係なく問題が起きるのがこのシリーズ。ある小藩からの依頼で、献上品の輸送を請け負った長崎屋。ところが江戸に着いたら…。うーむ、藩を助けたいのはわかるけども。長崎屋の窮地を救ったのは一太郎だった。

 「ころころろ」。仁吉は、長崎屋の仕事そっちのけで一太郎の目を治すため奔走していた。ところが、どんどん妖が寄ってきて、面倒を見るはめに…。人間の子供まで絡んできたし。最後はドタバタな決着で、このシリーズらしいといえばらしい。

 「けじあり」。佐助も一太郎の目を治すために奔走し…ん? 佐助が店を構えている? 何とも内容を説明しにくい。一太郎のためなら危険を省みない、佐助の心意気に拍手。失明中なのに佐助を心配する一太郎に、強い絆を感じる。

 元々安楽椅子探偵に近い一太郎だが、目が見えなくては動きようがない。必然的に、仁吉や佐助の出番が増える。それでもちっとも悲壮感が漂わないのがしゃばけシリーズなのだ。どうして一太郎は、こんなに落ち着いていられるのだ?

 そして最後の「物語のつづき」。鍵を握る相手をついに捕まえたっ!!! って、こんな手で捕まるのかよっ!!! 自らの目をかけ、運命の問答に臨む一太郎。うーん、何だか釈然としないが、一応一件落着? 騙されている気がする…。

 一大事の割にはあまり盛り上がらなかった、というのが正直な感想かな。



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