畠中 恵 19


ゆんでめて


2013/01/08

 しゃばけシリーズ第9作。ひらがな表記されると意味不明なこのタイトルには、重要な意味があった。読み終えてわかる。なぜこの方が文庫版解説を担当したのか…。

 とりあえず各編を振り返る。火事から4年後、「ゆんでめて」。帯には思い切り書いてあるが、一太郎はいつまでも忘れられなかった。よく当たると評判の鹿島の事触れを探しに、単身動き出す一太郎。冒険の結末は、あまりに酷だった…。

 火事から3年後、「こいやこい」。この時点ではまだ諦めていない。近江生まれの友、七之助に嫁が来るという。しかし、その許婚「千里」を名乗る娘が5人同時にやって来た。本物の千里を当てろというのだが…。うーむ、何とも人騒がせな…。

 火事から2年後、「花の下にて合戦したる」。一言で言うと、妖だらけの大花見大会。妖だけでなく、人間まで含めた過去の登場キャラが勢揃い。昔放送していた芸能人大運動会みたいな乗りの、ファンなら大笑いする1編。僕の感想は…ははは。

 火事から1年後、「雨の日の客」。長雨に見舞われた江戸。長崎屋近くの堀川も溢れそうになり、一太郎は根岸の寮に移ることになった。明らかになった長雨の原因とは…わはははは、何だよこの呆れるスケールは。そもそも悪いのは…。

 徐々に時間をさかのぼるという趣向のため、最初は聞いたこともない人物名が出てきて戸惑う。もしかして過去作品に出てきたっけ? と、忘れっぽい僕は結構真剣に考えてしまったぞ。この時点では、ややこしいことするなあとしか思っていなかった。

 そして時間が元に戻り、「始めの日」。怪しげな商売をする八津屋が長崎屋に接近してきた。しつこく通って来ていたが、ある日助けてくれと言う。自業自得だが、手を貸す一太郎たち。一件落着…ん??? どういうことそれ?????

 釈然としないまま解説を読んでみると…うーむ。従来通り、各編は独立して読めるが、全編を通してこんな仕掛けを用意していたのはもちろんシリーズ初。これがミステリーだったら怒るぞ。何でもありのしゃばけシリーズだから、こういうのも許されるのか。



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