東野圭吾 14


依頼人の娘


2000/11/16

 個人的に、最もマイナーな東野作品に認定しよう。この作品を知っている方はなかなかいないはず。

 文庫版は『探偵倶楽部』に改題されているが、このダサさというかひねりのなさはどうにかならんのか。これなら改題しない方が良かったぞ。「探偵倶楽部」なる組織は、実際に作中に登場する。うーん、そもそもこの組織のネーミングが良くないか?

 「探偵倶楽部」とは、政財界のVIPクラス、要するにお金持ちのみを会員とした極秘調査機関である。本作は、彼らが調査に当たった五つの事件を描いている。

 内容的にはオーソドックスな本格ミステリーである。依頼を受けて駆けつける、黒衣に身を包んだ男女。「探偵倶楽部」が鮮やかに真相を暴く!…のだが、困ったことに特に言うべきことも思い浮かばない。

 「探偵倶楽部」という組織名、そして黒衣の男女というキャラクターの胡散臭さが活かされていないのが残念。何しろ彼らは、無駄口は一切叩かない。当然、「真犯人はあなたです」などと指摘したりはしない。現実の探偵像としては理想なのかもしれないが、事件がいずれも平凡なだけに、これではあまりにも盛り上がりに欠ける。

 という訳で、東野作品全作読破を目指す方以外には薦めない。数ある東野作品の中にあって、誉めるところも貶すところも見当たらない稀な一作だ。

 書くことがなくなったので、最後に関係ない話を一つ。最近、僕が住んでいる会社の寮の郵便受けに、ある探偵社のビラが入っていたのはちょっと驚いたな。探偵社にも営業活動は不可欠らしい。



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