東野圭吾 17 | ||
仮面山荘殺人事件 |
本作の文庫版解説で、折原一さんは次のように述べている。本作は東野作品の三本の指に入る傑作である、と。うーん、そうかなあ…。
八人の男女が集まる山荘に、逃亡中の銀行強盗が侵入し、彼らは監視下に置かれてしまう。必死に外部への連絡を試みるが、なぜかことごとく妨害されてしまう。そんな中で、ついに一人が犠牲になる。状況から考えて、妨害者も殺人者も強盗ではあり得なかった。一体誰が…。
本作は、東野さん得意の叙述トリックを駆使した作品だ。最初は東野さんの狙い通りだった。一体どんな真相が待ち受けているのか、夢中になって読んでいた。しかし、ある時点で僕は違和感を感じた。それがどこでかは書かないでおくが、僕の頭にある結末が浮かんできた。僕は頭に浮かんだ結末を振り払おうとした。頼むから、外れていてくれ…。しかし、結末はまったくの予想通りであった。
何らかの論理的根拠があったわけではない。しかし、僕は違和感を感じてしまった。このことは、僕にとっては極めて不幸だったと言えるだろう。
本作の結末に驚くことができた方は幸せである。真相を看破することがミステリーの醍醐味である場合もあるだろう。しかし、見事に作者に騙されることも、またミステリーの醍醐味である。そのことを痛感させられた作品だ。
読み終えてから考えてみると、僕が違和感を感じた箇所以外にも随所に伏線が張られていたのだが、そんなことに気付いてもちっとも嬉しくない。誰か僕の記憶をリセットしてくれ。ああ、驚きたかった…。