東野圭吾 30


あの頃ぼくらはアホでした


2000/08/14

 エッセイ集も著作には違いない。もちろん、好きな作家の人となりにはファンなら興味を持つだろう。しかし、それにはその作家の小説が好きだという前提がある。ファンが期待するのはあくまで小説なのだ。

 本作は僕が読んだ数少ないエッセイ集の一つだが、同時に小説に匹敵する稀な作品である。だって…面白いんだもの、これ。読みながら何度腹を抱えて笑ったことか。なお、大阪出身の友人によると、「アホ」は誉め言葉なのだそうな。

 内容は、簡単に述べると青春記である。小学校時代から、大学を卒業して入社するまでを赤裸々に(?)語っているが、堅苦しい話などまったくない。笑えるエピソードばかりを網羅しているのがポイントが高い。よくぞこれだけのネタがあったものである。

 僕の平凡な人生を振り返ると…中学時代は色々と多感だった。ワル連中とはそれなりに仲良くしていた。ウルトラマンの消しゴムを20円のガチャガチャ(わかる?)で集めた。小学校の校門の前で、ひよこを売っているおっさんがいた。当然読書よりも漫画が好きだった。大きな声じゃ言えないが、キセル乗車している奴もいた(僕は断じてしていない)。大学の学生実験で、僕の班はいつも最後まで居残っていた。就職の面談は悲喜こもごもだった…しかし、本作の面白さには到底およばない。

 文庫版巻末で対談している、「ガメラ」シリーズや『MAYJUNhref="Miyabe_30.htm">クロスファイア』の監督金子修介さんも述べているが、会社でのエピソードがまったくないのが残念である。うーん、何があったんだろう? 書いてほしいなあ。

 僕は本作を読んでますます東野さんが好きになったのだが、最近とってもシリアスなエッセイを書いているのを発見した。「雪の夜に猫と」と題されたそのエッセイは、河出書房新社の文藝別冊「作家と猫」(2000年6月発行)に収録されている。これを読んで、輪をかけて東野さんが好きになってしまった。東野圭吾、侮りがたし。



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