東野圭吾 45

超・殺人事件

推理作家の苦悩

2001/06/25

 ぎゃはははははははははは! いい! いいよこれ、東野センセ!

 本作は基本的にお笑い作品である。帯の文句通り、昨今の出版・読書界をメッタ斬り…という面は確かにあるのだが、ここは素直に笑うのが読書人の粋であろう。

 傑作は何と言っても「超長編小説殺人事件」だ。各出版社がこぞって大作を刊行する昨今の小説界。その内幕のすべてがここにある(嘘)。ああネタに触れたい、触れたいけどそうはいかないこの辛さよ。

 私事で恐縮だが、電車での移動時間を読書に充てている僕にとって、厚さは深刻な問題なのである。座れるときはともかく、立っているときは片手で重量を支えねばならない。ページをめくろうとして吊り革から手を離すと、よろけてしまう。混雑した通勤電車内で広辞苑と争うようなハードカバーを開こうものなら、大ひんしゅく間違いなし。

 「著者渾身の3000枚!」などという謳い文句を前にして、星飛雄馬のように瞳を燃え上がらせる(古いなあ…)読者は少数派であろう。僕も買うだけ買っておいて、期待に胸を膨らます以前にため息が出てしまうことしばしば。敢えて作家名は挙げない。

 他の作品も毒がてんこ盛りだ。「超理系殺人事件」によれば、僕は似非理系テロリストだな。「超高齢化社会殺人事件」を読んで〇津〇警部シリーズが思い浮かんだのは僕だけか? 「超読書機械殺人事件」では読者さえも敵に回す。

 まあ、「日本推理作家協会、除名覚悟!」という文句はご愛嬌であろう。これを笑い流せないほど、日本推理作家協会も度量が狭くはあるまい。ご立腹の先生諸氏は、怒る以前に短くて知識に頼らない作品を書いてくれ。

 「もう二度とこんな小説は書けない!」なんて言わないで、東野センセにはもっともっと書いていただきたいものである。読者は待っているぞ。少なくともここに一人。



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