東野圭吾 78

虚像の道化師

ガリレオ7

2012/08/14

 嬉しいガリレオシリーズ最新作が到着である。サブタイトルにガリレオシリーズであることが明記されたのは初めて。短編集としては4作目になる。

 全4編はやや少ないが、シリーズ第1作『探偵ガリレオ』のようにトリック重視の作品が並ぶ。近年は『容疑者Xの献身』に代表されるようにドラマ性を重視する傾向があったが、人間関係もシンプルで、原点回帰したような印象を受ける。

 「第1章 幻惑す まどわす」。新興宗教団体の会合で、幹部の1人が突然5階の窓から飛び降りた。教祖の男性が、念力で突き落としたと自首してきたのだが…。そして草薙に回されてきたのだった。ついに出ました、宗教もの。トリックは漠然と予想した通りだったが、体を張って謎を解明する湯川に拍手。実際に応用できそうだな、これ…。

 「第2章 心聴る きこえる」。飛び降りて死亡した部長と、病院で突如暴れた男性は、同じ会社に勤務していた。草薙の同期である北原の人物像が興味深い。所轄勤務の北原は、本庁勤務の草薙にコンプレックスを感じていた。そんな彼を事件の背景と絡ませるのがうまい。これが転機になればいいが。でも、ええっ、これってあり???

 「第3章 偽装う よそおう」。町長になった大学の同期の結婚披露宴に来ていた湯川と草薙。プライベートで事件に巻き込まれるのもお約束。読んで字の如く、偽装を見破る話だが…何と湯川が数式を書いて解いている。ドラマで恒例だった演出が、原作に逆輸入された? 理屈はわかるがそんなにうまくいくのだろうか。実験しようがないけど。

 「第4章 演技る えんじる」。劇団を舞台にした愛憎劇。草薙でも気づいた(失礼)、見え見えのトリック。だが、確証がない…。何しろ相手はプロの役者である。手強い。トリックの裏にある事件の構図に注目したい。湯川の意外な一面が垣間見える。写真の謎は、明かされてみればそんなことか。この予算は経費で落ちるのか?

 読み応えという点ではやや軽いかもしれないが、東野圭吾さんのライフワークとして末永く続けてほしいシリーズだ。湯川が犯罪者じゃなくて本当によかった。



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