平山夢明 03


独白するユニバーサル横メルカトル


2006/12/22

 嗜虐、スカトロ、人肉食……読者を選ぶ鬼畜系の魅力全開!

 本命不在の『このミステリーがすごい!』2007年版の第1位に輝いた本作だが、見出しの一文がこれ。確かにそういう描写はあるが、本質ではないのは明白だ。執筆した人は一体何を読んでいたのだろう。平山夢明さんご自身のブログ(2006年12月16日参照)で嘆いているのもわかる。逆に、「鬼畜系」を期待した人には拍子抜けだったのではないか。

 この世の中に善意はないのか、C10H14N2(ニコチン)と少年―乞食と老婆」。理由なき暴力と、あんまりなおじいさんの境遇。でも、オチがないやん…。上記の見出しはこの一編だけで書いたのではと思われる「Ωの聖餐」。確かに描写が大変に汚いが、全体的にはどこか知的でロマンが漂う…んだよね? こんなところであの未解決問題の話になるとは。これを食べれば答えがわかるとしたら、どうします?

 酷いいじめに苦しむ少女を救ったのは、「無垢の祈り」。祈りが通じてよかった…のだろうか。個人的に本作中の一押し、「オペラントの肖像」。生理的嫌悪感をもよおす描写は最小限。ここに描かれる未来がまったくの絵空事であることを願いたい。中盤にこんな作品を並べるとはやられたな。これまたホラーのようなSFのような、「卵男」

 密林の王国に潜入するという設定だけなら『地獄の黙示録』のような「すまじき熱帯」。残酷描写のオンパレードなのに、なんだかあっけらかんとしている。そしてこのオチ。ブラックジョークですか? 日本推理作家協会賞受賞の表題作。「ユニバーサル横メルカトル」とは一言で言えば地図である。地図を語り部に据えたという、いわば一発アイデアもの。今どきの人間たちが失った忠誠心を、地図が示すところにほろり(嘘)。

 最後の「怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男」は、さすがに拷問の描写がきつかった。それでも京極夏彦さんの推薦文のように、どことなく優しさが漂う。全体的なテーマは愛…と思っていいんでしょうか。哀しく凄まじき愛の形。

 実に雑多な作品集である。平山夢明さんは、実録怪談シリーズで知られた方らしく、そちらの方が読み応えがあるという声も聞く。かなりの実力者には違いない。



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