平山夢明 09 | ||
或るろくでなしの死 |
小説の新刊としては約2年ぶり。何度も刊行を予告されては延期を繰り返した本作が、ついに刊行された。正直、実際に書店で見かけるまでは半信半疑だった…。
本作は、全7編が「或る〇〇〇の死」というタイトルがつく、七人七様の〈死〉をテーマにした短編集である。ただし、必ずしも物理的な〈死〉とは限らない。
「或るはぐれ者の死」。JJの訴えに誰も耳を貸さない。せめて自分の手で…それなのに…。現実社会でも似たような話は多い。一発目から嗚呼救いがない…。 「或る嫌われ者の死」。例年、年末には電車の人身事故が増える。そんな時期にこんな作品を持ってくるか。八方塞がりとはこのこと。二発目も嗚呼救いがない…。
「或るごくつぶしの死」。ごくつぶしとはよく言ったもので、酷い奴を描かせたら平山さんは天下一品。ある意味、死ぬ以上の報いを受けることに。もちろん嗚呼救いがない…。「或る愛情の死」。不幸な事故に遭って以来、笑いが消えた家庭。ところが、最後の灯火さえも吹き消す知らせが。嗚呼救いはない…けどどちらかというと切ない?
「或るろくでなしの死」。ろくでなしとはよく言ったもので、酷い奴を描かせたら平山さんは天下一品。と思ったら、あれっ??? 殺し屋と少女の交流という設定だけなら映画『レオン』っぽい。そして、本作中最も悲惨な死に様が待っているのだった…。
「或る英雄の死」。自業自得としか思えないが、それでも彼は英雄なのだろうか。飴村行さんの粘膜シリーズを彷彿とさせる陰湿さと、平山流の理不尽さの融合。「或るからっぽの死」。惹かれあう奇妙な男女。極めて特殊だが一つの愛の形と言えなくもない。救いがあるようなないような、かなり切ない話。彼は本望なのだろうか。
タイミング的に、今年の漢字「絆」に喧嘩を売ったような作品集だが、僕が期待していたほど壊れてはいなかったかな。平山作品にしてはウェットな要素も多い。単に僕が慣れただけなのか。道尾秀介さんが帯に寄せた言葉通り、もっと弾けてほしいのだ。
―なまぬるい世の中に毒を。やっぱり平山さんは僕たちのヒーローです。