稲見一良 02


ソー・ザップ!


2001/05/27

 様々な戦闘の一芸に秀でた男たちが集まる戦士のクラブ、パブ・パピヨン。広い店内のいつもの席に陣取る四人の男。素手の格闘では無敵の元レスラー、ベアキル。一見優男ながら手裏剣と小太刀の名手、ハヤ。大型獣の名ハンター、ブル。元警察官で、こちらも射撃の名手、金久木。

 そんな彼らに勝負を持ちかけた、レッドムーン・シバと名乗る謎の男。彼は、自らの命に三千万円の賞金を賭けるという。四人は勝負に乗った。レッドを含めた五人の猛者たちは、舞台となる山野へと分け入った…。

 という設定の本作だが、ただの殺し合いかといえばそうではない。稲見一良ならではの、全編に匂い立つダンディズム。原始武器から銃火器まで、武器の描写のリアルさ。一方で、たとえようもない虚無感も漂う。

 「知っての通りあれは茶番だ。ショービジネスだ」とプロレスを止めた理由を語りつつ、キジバトを飼うという一面も持つベアキル。何度となく流血の試合を経験しながら、命あるものが息絶えるのを見ることには慣れていないハヤ。ある理由から、唯一賞金を目的に参加したブル。非情な狙撃手ながら、孤独さを実感してもいる金久木…。

 戦いの中に自らの存在意義を見出すのなら、それはそれでいい。だが、本作において勝負の決着は敗者の死を意味する。なぜそこまでしなくてはならないのか? 彼らが戦闘マシーンにはなり切れていないだけに、よけいに哀しさが募る。

 格闘技を含め、あらゆるスポーツにおいて敗北は屈辱に違いないが、すべてが終わるわけじゃない。敗れたらまた立ち上がればいいし、やり返せばいいじゃないか。だから僕は、勝っても負けてもまたスタジアムに足を運ぶのだと思う。

 色々な解釈が可能な懐が広い作品ではある。ただし、パブ・パピヨンと同様に、女性には居場所がない点を除けばだが…。



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