石持浅海 15


ガーディアン


2008/08/31
2008/09/02訂正

 毎度無理に変化球を投げている気がしないでもない石持作品だが、今回はとうとう超能力という禁じ手を使ってしまった。この設定で本格が成立するのか?

 幼少時に父を亡くした勅使河原(てしがわら)冴は、不思議な力に護られて育ってきた。「ガーディアン」と名づけられたその力は、冴に危機が迫ったときにだけ発動する。突発的な事故にはバリアとなる。明確な悪意を持つ相手には、それ相応の報復をする。

 「ガーディアン」の大きな特徴は、専守防衛である点にある。能動的に相手に攻撃を仕掛けることはできない。ガーディアンは悪意に反応する。間違ってぶつかってきた相手をこっぴどく痛めつけたりはしない。その点に本格として成立させる余地がある。

 前半「勅使河原冴」の章。冴は会社の期間限定プロジェクトのメンバーとして活動していた。酒の席で友人がガーディアンの存在を漏らすが、酔った面々は話半分に聞いていた。ところがその帰り、ガーディアンの力を目の当たりにすることになる。後日、ガーディアンの仕業と疑われる悲劇が起きる…。冴にだけわかる発動のサインが証拠なのだが。

 悲劇の内容は当然伏せておくが、ポイントはガーディアンが発動する条件、そしてガーディアンが発動しない条件にある。その結果導かれた結論は…あまりに身勝手に過ぎる。冴自身に制御はできないガーディアン。それをこのように利用するとは。

 間章を挟んで後半「栗原円」の章。冴はプロジェクトメンバーだった栗原洋樹と結婚し、ガーディアンは冴から娘の円に引き継がれた。洋樹は間章で円のガーディアンに懸念を示していた。そして中学生になった円が、友人の奈々子と巻き込まれた事件。

 前半よりはるかに凄惨な展開だ。やはりガーディアンが発動する条件が問題になるが、ポイントはラストにある。専守防衛のガーディアンを利用して、能動的に攻撃する方法があるか? なるほど、ひねってはいるが…警察は処理に苦慮するに違いない。

 前半はともかく、後半を本格と呼べるのかはかなり疑問が残る。これぞ石持流?



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