石持浅海 17 | ||
君がいなくても平気 |
年の瀬に届けられた石持浅海さんの新刊。さあ、今回はどんな突っ込みどころがあるかな。こんな僕って、石持作品の楽しみ方を間違っているだろうか。
携帯関連のベンチャー企業ディーウィとベビー用品メーカーのベイビーハンドの業務提携により結成された共同開発チームは、早速ヒット商品をものにした。ところが、祝勝会の翌日、チームリーダーの粕谷が社内で不審死を遂げた。死因はニコチン中毒…。警察も捜査に乗り出し、疑心暗鬼に陥る共同開発チーム。
久しぶりにクローズドサークルものか? と思ったら、微妙に違う。裏表紙によると、チームの一員である水野勝は、同僚で恋人の北見早智恵が犯人であるという決定的証拠を掴んでしまう。だが、この時点で決定的とは言えまい。その証拠を発端に、考えれば考えるほど水野が確信を深めていく点が本作のポイントと言える。
そしてポイントがもう1つ。実は水野は早智恵をそれほど愛していない。彼は捜査の手が早智恵に及ぶ前に別れようとする。どういうタイミングで切り出すか。著者のことばに、「自分は、決して彼のようにはしない」と考えながら読んでいただければ幸いです、とある。なるほど、2人になると結局性欲を抑えられない水野には呆れてしまう。
何しろ最初から犯人がわかっているため、あまり堂々巡りにはならない。焦点はただ1つ。WHY? 確かに伏線は張られていたが…うーん、技術者としては考えさせられるし、気の毒なケースではあるけれど、共感できるかといえばやはり難しいかな。動機はともかく、どうしてこんな派手な殺害方法を選んだのかも解せない。
もちろん水野にも共感はできない。同時に、事件の責任を水野に問うのは酷ではないかとも思う。石持作品を彩った鋭い探偵役たち。彼らのような洞察力が水野になかったのが不幸だったのか? 真相に行き着いた水野も十分鋭いのだが…。
結論は、どこを切っても本作は石持作品でした。ここまで共感させないのはある意味才能かもしれない。共感できない僕が悪い? もちろん次も読みますよ。