石持浅海 23


ブック・ジャングル


2011/06/05

 本格か否かというより、もはやミステリーか否かという問題のような気が…。

 ある日の深夜、閉鎖された市立図書館に、それぞれの思惑で忍び込んだ男女5人。そんな彼らを、毒針を備えたラジコンヘリが襲う! 簡単に言うとこんな話なんですがね。最初に、それを言っては元も子もないことを言いましょう。

 どうして深夜の閉鎖された図書館に侵入しようと思ったんだよ!!!!! そんなことしなきゃ危険な目に遭わずに済んだだろうが!!!!! 切実な理由があるわけでもなく、ただの不法侵入者にちっとも感情移入できないだろうが!!!!!

 そこは百歩譲るとしましょう。侵入早々、ラジコンヘリの洗礼を受ける5人。機体は発泡スチロール製で容易に壊れるが、叩き落しても次々新たなヘリが…。敵方の操縦技術はかなり高く、一度やられれば必ず学習し、新たな攻撃をしかけてくる。

 実際にこんな目にあったらそりゃ恐怖に陥るでしょう。でもね、また元も子もないことを言いましょう。なんでわざわざこんな凝った殺し方をするんだよ!!!!! しかも一体何機持ち込んだんだよ!!!!! こんなにたくさん怪しまれずに持ち込めるのかよ!!!!!

 深夜の図書館でラジコンヘリの襲来という設定の斬新さは、認めてもいいでしょう。でもね、考えてみてください、本作が映像化されたとしたら。ラジコンヘリはあくまでおもちゃ。搭載武器は毒針以外にティッシュで包んだコショウや爆竹。さらにBGMはワーグナーの「ワルキューレの騎行」。……。あまりにも安っぽいだろうが!!!!!

 犠牲者も出ているし、敵方は本気。決してお遊びではない。でもねえ、小道具がちゃちすぎて緊迫感よりは滑稽さが圧倒的に勝ってしまう。しかも、真犯人が意外だとかミステリー的に見るべき仕掛けも特にない。B級パニック小説。そうとしか評しようがない。

 同じ〈KAPPA-ONE〉出身者の東川篤哉さんの方が、今や立場が上だな…。



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