石持浅海 24


人面屋敷の惨劇


2011/08/09

 うーむ、どうしてこの季節にこんな作品を出すかね…。

 『人面屋敷の惨劇』という、いかにも綾辻行人さんの館シリーズを彷彿とさせるタイトル。カバー折り返しの著者のことば曰く、この人面屋敷が綾辻館を超えているとはとうてい思えませんが、少なくとも「石持館」にはなっていると思います、とのこと。……まあ、これまでの作品同様に、独自の世界を作り上げていることは間違いない。

 東京都西部で発生した連続幼児失踪事件。意を決した6人の被害者家族が、かつて犯人と報道された投資家、土佐の住む屋敷に乗り込む。その屋敷は、通称「人面屋敷」と呼ばれていた…。綾辻さんの「館」には様々な仕掛けが施されていたが、屋敷そのものにトリックがあるような話ではないことは書いてもいいだろう。

 本作のポイント、それはずばり人間の「狂気」である。綾辻さんの「館」も狂気の産物ではあるのだが、やっぱり主役は「館」という感がある。館の主のいきっぷりでは上回っているかもしれない。真の狂気が明らかになるのは終盤になってからだが。

 絶対尻尾を出さない自信があるのか、屋敷に踏み込んだ面々に強烈な先制パンチを見舞う土佐。修羅場と化した人面屋敷に、さらに謎の美少女が出現。表紙のイラストがこの美少女か? こんな状況でも冷静に対処するのは、本作に限らず本格のお約束。

 ロジックの面について特に言うことはない。いつも通りの堂々巡り。トリックらしいトリックもないが、こんなものを凶器として使うという発想は石持浅海ならでは。そして、ついに見つけた証拠とは…。うーむ、これは「館」じゃなくてむしろ……以下略。

 最後に明かされた事実は、さすがに伏線が露骨すぎてさほど驚かなかった。作中の人物からして驚いていないのだから。狂人の理屈にただ呆れるだけ。

 それにしても、これだけの騒ぎを起こしてよく警察を納得させられたものだ。さっさと通報しない時点で心証が悪いはずなのに。というか、よく今までばれ……ごほんごほん。何だか無理矢理なまとめ方だが、彼らの向かう先に希望はあるのか?



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