石持浅海 32


わたしたちが少女と呼ばれていた頃


2013/05/20

 碓氷優佳シリーズ第4弾は初の短編集であり、時代が彼女の高校時代にさかのぼる。碓氷優佳という人格が、いかにして形成されたのか?

 中高一貫の名門、私立碩徳横浜女子高等学校。優佳は高等部からの編入学だった。しかも、彼女が配属されたのは特進理系クラス。この設定だけでも優佳の優秀さがわかる。全7編、優佳の親友の上杉小春の視点で描かれる。

 殺人事件は起きませんので悪しからず。いわゆる日常の謎系に属するだろう。登場人物は優等生ばかりとはいえ、謎そのものは他愛もないといえば他愛もない。何だかんだで普通の女子高生なのだから。ただし、優佳は除く。

 優佳の薄ら寒い洞察力は、高校時代には既に身についていたことに、苦笑せざるを得ない。家庭でどういう躾を受けてきたのか。僕が優佳の友人だとしたら、感嘆する以前に引いてしまうと思うが…。小春の無邪気さに、本作は救われている。

 「赤信号」。こんなもん学校が本気で対策しろよ…。「夏休み」。優等生だって恋愛したい。しかし、すべて想像だろこれ…。「彼女の朝」。酒飲みで通っているある生徒。おいおい、大らかな学校だな…。理由の絶妙さといい、ああこれが石持浅海作品だね。

 「握られた手」。あらぬ疑いを解明してみれば…何だそりゃ。「夢に向かって」。うーむ、そりゃ余計に遠回りでは…。というか、余計なお世話だろ。「災い転じて」。センター試験直前の怪我が生んだ誤解。なぜそんな誤解をする…。

 最後の「優佳と、わたしの未来」。卒業式を終え、優佳の恋愛話を肴に盛り上がる面々。そもそも、優佳という人物に恋愛感情はあるのか? 最後の最後に愕然とする小春。優佳は化け物だとしても、ここまで見抜いた小春も大したものではないか。

 優佳のルーツに迫るのかと思ったら、さっぱり迫っていない作品集でした。



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