北村 薫 02 | ||
夜の蝉 |
タイトル中の「蝉」という字は、正確には正字体で表記する(JavaScriptで別ウィンドウが開きます。15秒後に閉じます)。
「円紫師匠と私」シリーズの第二作である本作は、日本推理作家協会賞受賞作品である。受賞をしたとなると、記念パーティーなど催されるわけで、覆面作家だった北村さんは二作目にして早くも素顔を公開することになったのだった。
ここにミステリの至芸がある、という文庫版巻頭の山口雅也さんの賛辞に代表されるように、北村作品は評論家や作家からの評価はすこぶる高いが、一般読者からの評価は真っ二つに割れると思っているのは僕だけじゃないだろう。中でも本作は、最も評価が分かれるのではないか?
質の高さは認めざるを得ないだろう。完璧すぎるくらい完璧に構築された作品世界。でも、でもねえ…僕には厳しいよ、これは。本作を読み終えて、国語&日本史嫌いだった僕がなぜか覚えていた、有名な狂歌を思い出した。
「白河の清きに魚も住みかねて、もとの濁りの田沼恋しき」
色々な意味で、とにかく隙がない。巻頭の「朧夜の月」はともかく、続く「六月の花嫁」は…うーん、純愛ですな。円紫師匠に言わせれば僕は下衆なんだろう。そして表題作「夜の蝉」は…うーん、僕ごときが口を挟む余地はありませんです、はい。
きっと北村ファンの怒りを買うに違いないな…。でも、厳しいものは厳しいんだからどうしようもない。