北村 薫 06


冬のオペラ


2000/06/02

 「円紫師匠と私」シリーズをはじめ、北村作品は感想を書くのが難しいなあ、といつも思う(別に書く義務はないのだが)。本作の解説によれば、何回も読み返さないと分からないように書いているとのことだが、再読をあまりしない僕には耳の痛い話である。

 さて、本作だが、自称名探偵巫(かんなぎ)弓彦が関わった三つの事件を描いている。彼の記録役を買って出た、姫宮あゆみと僕の共通点が多いせいか(人間性は含まない)、多少なりとも感情移入しながら読むことができた。北国生まれであること、修学旅行は中学は関東方面、高校は関西方面であったこと、そして父を亡くしていること。まあ、ただの偶然だろうけど。

 表題作をはじめ、本作には女性を弱い存在として扱う男性が何人か登場する。文体が終始端正であるだけに、かえって男性として身につまされるものがある。しかも、いずれも大学関係者だったりして…。

 技術職という立場上、特に「三角の水」に出てきた学生君には言ってやりたい。仕事の厳しさに男も女もないんだぜ。それに、「冬のオペラ」に出てきた教授様。あんたに学問を語って欲しくはない。

 本作は全体として透明感を保ちながら、人間の嫌な面を敢えて直視しているように感じる。できることなら、「円紫師匠」シリーズにおける「私」のように、姫宮あゆみの成長過程を時系列的に書いてほしい気がするが、おそらく続きが書かれることはないのだろう。

 それにしても、人知を越えた難事件しか扱わない名探偵巫弓彦は、僕にとっては最後まで「人知を越えた」存在であった…。



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