北山猛邦 03 | ||
アルファベット荘事件 |
北山猛邦さんが講談社ノベルス以外からも作品を刊行していたのを知ったのはつい最近のこと。白泉社My文庫? 本作を含め9作が刊行されたのみらしいが…。
絶版になっているとつい読みたくなってしまう僕は、久しぶりに某大手チェーン店で探してみる。目的の本は比較的簡単に見つかった。
舞台は岩手の洋館、アルファベット荘。庭や屋敷内にアルファベットのオブジェが並ぶ奇妙な屋敷。いいじゃない、このジャンルはどうしてそんな屋敷を建てたのか意味不明なくらいでちょうどいいのだ。大雪に見舞われ、絵に描いたような「雪の山荘」ものの展開。
登場人物の方は…ライトノベル系はキャラを前面に出すことが求められるのだろうか、良くも悪くも個性的だ。劇団の看板女優にして変人の美久月。事件を解決することのみに自らの存在意義を見出せる、何も持たない探偵のディ。……。ま、読もう。
メインのトリックは、講談社ノベルスからのデビュー作同様に一目瞭然でいいねえ。漠然と想像した通りだったが、なるほどその「共通点」には気づかなかったな。ヒントもあるし。そして、もう一つの『創世の箱』のトリックは…こういうのって、読者はわからなかったくせに「なあんだ」と片付けてしまうんだよなあ。でも実は楽しんでいるからいいのだ。
講談社ノベルスのシリーズとは違った雰囲気が味わえるが、トリック以外の要素にどこまで重きを置くかで読者の評価は分かれるか。サブタイトルの"A Love Story"ってそういうことなの。これも愛・あれも愛・たぶん愛・きっと愛。……。倒錯した愛、か?
あとがきによると、本作刊行の話はメフィスト賞受賞前からあったそうである。ある意味、こちらがデビュー作と言えるかもしれない。