今野 敏 PQ-02


超能力者狩り


2010/01/20

 『奏者水滸伝 小さな逃亡者』と改題されたシリーズ第2作。読み始めてすぐ思った。前作の結末と話が違うじゃないか??? どう違うのかは書けないが。

 相変わらず西荻窪の小さな店を拠点にする凄腕のジャズ・カルテット、古丹神人・比嘉隆晶・遠田宗春・猿沢英彦。ある日のライブ後、比嘉は追われていた金髪の少女を救う。一方、ロサンゼルスで起きた殺人事件の捜査でFBIから捜査官が来日し、警視庁に協力を求める。比嘉が救った少女に関係があるらしいのだが…。

 本作以降、STシリーズのようにメンバー個人にスポットが当たるようだ(そういえばバンド名がないが…)。本作はドラマーの比嘉を中心に物語が展開する。成り行き上少女を匿うことになった比嘉。彼女が打ち明けた事情が、他人事ではなかったから。

 さらに、アル・ショウという元宇宙飛行士の男が絡んでくる。宇宙意思を提唱するアル・ショウの言葉はとにかく胡散臭い。新興宗教の類かと思いきや、その裏には真の目的が隠されていた。4人に強い興味を抱き、接近を図るアル・ショウだが、案の定けんもほろろに断られる。もちろん、おとなしく引き下がったりはしない。

 今回も演奏シーンは見せ場の1つだが、今野敏ならではの戦闘シーンもたっぷりだ。比嘉を中心に据えつつ、4人がそれぞれの能力を発揮する点も、STシリーズに通じるものがある。知性派の猿沢・遠田に、肉体派の古丹・比嘉。古丹も比嘉も化け物かっての。

 脇役陣にも注目したい。米国育ちで英語が堪能だが、風貌のせいで誰にもそうは思われない赤城と、FBI捜査官アダムスンの掛け合い。2人ともお互いを認めているのに、憎まれ口ばかり叩くんだよなあ。それにしても、人格者然とした表の顔が簡単に崩れ、俗っぽさ丸出しになるアル・ショウには苦笑した。だからそんな手に引っかかる。

 1つ間違えば日米の国際問題に発展するところだったのだが…木喰が事態をややこしくしたと思うのは気のせいだろうか?



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