今野 敏 SJ-04


過去からの挑戦者


2009/11/14

 『特殊防諜班 凶星降臨』と改題・復刊されたシリーズ第4作。あの男が敵のトップクラスではないことは容易に察せられたが、本作ではついに敵の首領が明らかになる。

 そもそも、首相直轄の特殊防諜班に属する真田の任務は、少女と老人の警護だけではない。いつでも調査指令に備えなければならない。今回、真田は凶行を繰り返す過激派メンバーを追っていた。ところが、過激派の背後にいるのは…。

 一方、モサドのエージェントであるザミルは、本国からの急な召喚を受け、西ベルリンに飛んでいた。捕らわれの身となったザミルが見たものは…。

 今回の設定はすごい。『過去(シュパンダウ)からの挑戦者』という原題がつけられたのは、なるほどと納得した。何たって歴史を覆しているのだから。こういう説を唱えた人物は実際にいたようだが、それにしても大胆である。さすが今野敏。

 前作では射殺され、今回は3人の過激派に手玉に取られ、引き立て役になっている警視庁公安部に少々同情する。しかし、堂々とその身分を名乗るのは不用心ではないかい。おかげで真田に真の狙いを嗅ぎつけられたのだから。真田をなめていたか。

 結局また組む真田とザミル。ザミルがどうやって危機から脱したかは、言わぬが花。このシリーズならではとだけ言っておこう。今回の決戦の舞台は、何と…。このセンスに脱帽すると同時に、改めて老人が超大物であることがわかる。

 前作から一転、日本で西ドイツで、戦闘シーンがたっぷり堪能できる。敵に対する容赦のなさが際立っているのも特徴である。これは生きるか死ぬかの戦いなのだ。

 実は、本作では日本の政権交代が起き、真田の立場も翻弄される。ただの偶然とはいえ、現在の日本も政権交代の直後で、事業仕分けやら何やら騒がしい。屈強の男真田も、あくまで宮仕えなのだなと思うと、少しは親近感がわくかも?



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