今野 敏 ST-04

ST 警視庁科学特捜班

青の調査ファイル

2009/03/21

 STメンバー5人にスポットを当てた「色」シリーズの第1弾。「帰っていい?」が口癖の、美貌のST文書担当・青山が、心霊現象を前にして俄然やる気を見せる?

 心霊テレビ番組の撮影現場となったマンションの一室で、スタッフの1人が首を骨折して死亡しているのが発見された。事故死として処理されかけたが、STは不自然さを指摘し、殺人の可能性を追う。果たしてこれは霊の仕業なのか、それとも…。

 最近では少なくなったが、一時は心霊番組が流行りだった。故宜保愛子氏など有名霊能者に心霊スポットで霊視をさせるが、最後は有耶無耶に終わるのがお約束。本作にも、安達春輔という霊能者が登場する。青山が彼に強く興味を持ったらしいのだが。

 事件の構図そのものは極めてシンプル。事故か他殺か。他殺だとすれば犯人は誰か。事故説は黒崎が体を張って否定する。台詞がまったくないことも珍しくない黒崎のスタントマンぶりは、見せ場の一つだ。その心意気が捜査員にも火を着けた。

 本作の最大の読みどころは、心霊現象の合理的説明を試みていることである。現場の部屋は、ある特殊な環境下にあった。STは深夜の現場に事件関係者を集め、実証を行うのだが…うーむ、そういう説があるのを全面否定はしないが、そういう環境を経験したことがないし、正直釈然としない。そう都合よく「見える」もんなのか?

 青山の活躍がメインの作品になっていないのも気になる。もちろん青山の分析は冴えているし、お膳立てしたのは青山なのだろう。しかし、心霊現象の本質に迫ったのは赤城であり翠であるような。個性派集団STのチームワークと考えるべきなんだろうな。

 心霊現象の経験がない僕としては、安達春輔が今後も霊能者としてやっていける(?)のか気になるところ。そういえば、『〇ー〇の〇』とかも心霊番組が形を変えただけだよなあ。僕は一切信じないが、日本人ってこういうのが好きだよねえ。



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