倉知 淳 09


ほうかご探偵隊


2005/10/24

 かつて子どもだったあなたと少年少女のための―講談社ミステリーランドシリーズ。その装丁はいつも書店で目を引くが、普段愛読している作家以外の作品を手に取ることはない。倉知淳さんの作品である本作は、ようやく3作目である。

 いやあ面白いよこれ。現時点では倉知作品で最も好きかもしれない。主人公の「僕」―高時くんは小学五年生。倉知さん得意のロジックは一切手抜きなし。むしろ凝りに凝っている。それでいて、同年代の子どもたちはもちろん、大人が読んでも十分に面白い。倉知淳という作家は、本当に読んで楽しいミステリーを届けてくれる。

 五年三組で連続消失事件が発生。一番目が棟方君の絵、二番目がニワトリ、三番目が巨大な招き猫型募金箱、そして四番目が僕のたて笛の一部。ニワトリは密室から消失した。そして四つの事件に法則性は? 龍之介くんの名推理が冴える!

 高時くんはあくまで語り部、すなわちワトソン役に徹しているのだが、目立つタイプではなかった僕はそんな高時くんが好きだ。龍之介くんの人を食った名探偵ぶりは堂に入ったもの。高時くんが思いを寄せる、学級委員ではきはきと発言する吉野さん。ニワトリの飼育係成見沢さん。以上のメンバーが事件に挑む。

 四人が中心の展開とはいえ、脇役陣の賑やかさも重要な要素だ。絵の得意な棟方くんの超大物ぶり。いつも熱意が空回りするが憎めない学級委員の神宮寺くん。甲斐甲斐しく妹の面倒を見る相田くん。徘徊癖がある保健の仁美先生などなど。終盤の二転三転する展開には、五年三組の面々それぞれの優しさが絡んでいるのである。

 この作品にはいじめっ子もいなければ意地悪先生もいない。そんなものは甘ちゃんだと思う大人の読者は、最初から読まない方がいい。なぜいないかって? 出る幕がないからだ。心躍る楽しいミステリーには必要ないからだ。

 唐沢なをきさんの絵も素敵。このシリーズは絵も楽しみの一つだ。



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