倉知 淳 12

シュークリーム・パニック

生チョコレート

2013/12/02

 倉知淳さんの3年ぶりの新刊は、2ヵ月連続刊行の短編集とのこと。一度に出してくれよと思わなくもないが、素直に新刊を喜びたい。

現金強奪作戦(但し現地集合) ―― メフィスト 2012 VOL.1

 金に困って銀行強盗の誘いを受けてしまった男。倉知作品には珍しい人物設定で興味深い。しかし、当日は現地集合だというのだが…現地集合の強盗って聞いたことないぞ。その理由とは…うーむ、盲点は盲点だけれども、現在の警備体制でそんなにうまくいくかねえ。それ以上に、この男が懲りていないらしいのが気になった。

強運の男 ―― メフィスト 2012 VOL.2

 これまた倉知作品には珍しい、ブラックな味わいが興味深い。すべて勝ち抜く確率は限りなく0に近い、5番勝負。この強運の男、途中で気味悪くなって勝負から降りようとはしなかったのだろうか。オチはちょっと読めたかもしれない。ギャンブラーの最終到達点は競艇だと聞いたことがあるが、この紳士はもっと突き抜けてしまったのか…。

夏の終わりと僕らの影と ―― メフィスト 2013 VOL.2

 先の2編とはガラリと作風が変わる。本作の約半分を占める、ミステリーというよりは青春小説と呼びたい1編。感想を一言で述べると、嗚呼青春だねえ。誰も死んだり傷ついたりしませんので、安心してお読みください。謎自体は他愛ないが、動機が嗚呼青春だねえ。それを真剣に解いちゃう彼はちょっと無粋だが、まあいいじゃない青春だし。

 意外性と持ち味の両方を発揮した、待った甲斐がある作品集だ。せめて、年に1冊くらい短編集を出していただけないでしょうか、倉知さん。



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