舞城王太郎 01

煙か土か食い物

Smoke, Soil or Sacrifices

2001/03/25

 日本全国のPTAから、文句なしに有害図書のお墨付きがもらえることだろう。

 タイトル、装丁、舞城王太郎というペンネーム…何もかもが胡散臭い。ついでに言うなら、講談社ノベルスとしては異例の一段組になっている。正直に言って、これで応募した作者も凄いが、本作を第19回メフィスト賞に選んだ講談社はもっと凄い。帯に推薦文を寄せている福田和也氏に聞いてみたい。『作家の値うち』式に100点満点で採点するなら、本作は何点なのか?

 アメリカはサンディエゴで働く救命外科医、奈津川四郎。彼の母親が、殴打された上に生き埋めにされるという事件が起きる。四郎の故郷である福井県西暁町では、同様の事件が続発していた。(紹介文によれば)凄絶な血族物語が幕を開ける…。

 良くも悪くもアメリカンな乗りが、本作のすべてと言っていい。読者に中指を立てているような、ナメきった文体。汚い言葉のオンパレード。エグい暴力描写。それらをすべて除いてしまったら、何が残るのか。ストーリーなんてあってないようなもの。事件といい、登場人物といい、まったく馬鹿げてる。

 こういう壊れた作品世界も、場合によってはありだと思う。99.9%拒絶しつつも、0.1%惹き付けるものがあるのも事実。でも、ラップは英語のための音楽だと思っている僕には、本作は日本語で歌うラップのようにぎこちない。片仮名でマザファッカーなどと書かれても、違和感があるんだよなあ。少なくとも、日本人が口にしたって様にならない。四郎はアメリカ暮らしが長いという設定になってはいるが。

 この作家は化けるという計算が、講談社にはあったのだろうか。化ける可能性を否定はしないが、尻つぼみに終わる可能性も同じくらいあると思う。この作風を続けるとしたら、諸刃の剣と言うしかない。今のところ、舞城王太郎という作家に対する評価は保留しておこう。この手は二度と通用しないぞ。さあ、どうする?



舞城王太郎著作リストに戻る