万城目 学 10


とっぴんぱらりの風太郎


2013/12/10

 ぶ、分厚い…。待望の万城目学さんの新刊は、辞書のようであった。長期戦を覚悟して読み始める。実際、なかなか読み進まなかった。

 万城目作品としては初めての、本格的な時代小説である。主人公の風太郎は忍者。最初にお断りしておきたい。これまでの万城目作品のようなおちゃらけた要素は極めて少ない。内容はハードだ。当然である。非情の掟に支配された忍の世界を描くだから。

 忍としてはやや力量が劣る風太郎。ある任務に絡み、伊賀から追放されてしまう。それというのも…。京でぐだぐだと過ごす風太郎だが、忍の世界が忘れられない。そんな風太郎が、1個のひょうたんと出会い、彼の運命は奇妙な方向へ転がっていく。

 時代小説だが、今回もファンタジーの要素はある。しかし、「ひょうたん」の設定が本作に必要不可欠だったのかは悩ましい。ファンタジーこそ万城目さんの持ち味であるのは承知しているが、全体的にシリアスな物語だけに、浮いている印象を受ける。

 それはともかく、風太郎は運命に従い駆ける。時代背景に注目したい。豊臣から徳川へ覇権が移り、忍の立場も揺らいでいた。忍の世界で裏切りは日常茶飯事とはいえ、これはさすがに酷ではないか。それでも、忍の誇りを捨てられない風太郎。彼が忍として半人前だけに、頑張れば頑張るほどど切ないまでに滑稽だ。

 その一方、敵の非情さが際立つ。憎まれ役ではない。これまでの作風からは考えられない、本物の悪役である。風太郎にはあまりに手強すぎ、瀕死の重傷を負わされるが、最後に再び対峙することになる。どうする風太郎?

 戦火に飛び込むクライマックスには惹き込まれたし、本作を最高傑作に推す声もわからなくはない。でもね…やっぱり長すぎた。内容がハードな上にこの長さはしんどかった。読み終えて、満足感より疲労感が強かったのが正直なところ。

 次回作は標準的な長さでお願いしたい。文句ばかりですみません。



万城目学著作リストに戻る