湊かなえ 09


サファイア


2012/05/31

 短編集ということもあり、初めて新刊で手に取った湊かなえ作品である。長編と比較すればドロドロは控え目な一方、意外性に富んだ作品集である。表題作を始め、全7編のタイトルは宝石の名前になっており、それぞれキーアイテムになっている。

 「真珠」。拘置所で面会した、連続放火犯の中年女性が語った半生とは。良くも悪くも話題は呼ぶだろうが、どんな理不尽なクレーム対応よりも厄介かもしれない…。長編に似たテイストを唯一感じる1編だが、本作中では異質な存在と言える。

 「ルビー」。瀬戸内海に浮かぶ小さな島にできた老人福祉施設。それは全国初の試みだった。こんな計画が持ち上がったら反対運動は必至。この母のような対応は、僕にはできないだろう。交流記とミステリー的な意外性が見事に融合した1編。

 「ダイヤモンド」。理想の婚約者に出会えたはずの男。だがしかし…。現実に起きたあの事件に似ている気がしないでもない。ファンタジーの要素を巧みに取り入れた、心温まる物語…かと思ったら、最後はやっぱり湊作品だった…。

 「猫目石」とはよく言ったもので、家族それぞれが裏の顔を持っていた。現実にありそうな話ばかりだから、生々しい。この人は何をしたかったのだろう。結果的に家族の結束は強まり、めでたしめでたし…なわけないだろこんなもんっ!!!

 個人的に本作の一押し、「ムーンストーン」。元市議である夫の暴力に耐えかね、殺害してしまった妻。面会に現れたのは…。ラストの鮮やかな逆転に、まんまとやられましたとも。こういう技も持っていたとは。素直に騙されるが吉。

 最後の2編は一続きになっている。「サファイア」。恋人は待ち合わせ場所に現れなかった。彼は鉄道事故で亡くなっていたのだ。残された彼女に追い討ちをかける、この事実…。実に湊さんらしい。ところが、「ガーネット」では…。最近読んだある作品の設定が思い浮かぶ。湊さんらしくないアフターケアとだけ書いておきましょう。

 心理描写重視の作家と思っていたが、うまさが光る作品集だ。



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