宮部みゆき 03


我らが隣人の犯罪


2000/07/22

 既刊の宮部作品はすべて読了しているのだが、思い返すと短編集は内容を忘れている作品が多いかな。ましてや、短編一本一本まではとても覚えていない。どうしても長編と比較すると短編は印象が薄い。しかし、そんな中で強烈な印象を残した一編が、本作に収録されている。

 その作品は「サボテンの花」という。権藤教頭が勤務する小学校で行われる、恒例の六年生の卒業研究発表会。六年一組が選んだテーマは、何と「サボテンの超能力の研究」だった…。担任教師はさじを投げてしまう。果たして子供たちの真意は?

 文庫版解説で北村薫さんも述べているが、宮部さんはどうしてこんな話を思い付くのだろう? 今時こんないい子たちがいるんかい、などと言わないように。権藤教頭も教師冥利に尽きることだろう。関係ない話だが、漫画『ど根性ガエル』に出てきた「教師生活25年」が決まり文句の町田先生を思い出してしまった。それにしても、六年一組担任の宮崎教師は絶対に「変」だ。

 「サボテンの花」の印象があまりにも強すぎて、他の4編が霞んでしまっている感があるが、もちろん他の作品も粒揃いである。

 「この子誰の子」なんかもほろりとする作品だ。下手な作家に書かせたら非常に鼻につくテーマだが、宮部さんが書くと素直に読めるから不思議である。「祝・殺人」も、下手をすると安っぽい二時間ドラマになってしまうところだが、我が社の社員食堂と違いべたつきを抑えてからっと揚げている。デビュー作にして表題作の「我らが隣人の犯罪」も、さすがである。

 しかし…やっぱり本作は「サボテンの花」に尽きるなあ。これ一作だけでも、やたらと長い長編よりはるかに読み応えがあるのに、これだけの作品が揃って390円(税抜き)は、絶対にお得ですぜ。



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