宮部みゆき 15 | ||
ステップファザー・ステップ |
C・ライス『スイートホーム殺人事件』にも匹敵する大傑作!―と文庫版の紹介文には書かれている。この作品を知らない僕には、コメントのしようがない。
雑誌「ダ・ヴィンチ」の1999年11月号で「マンガ化してみたい!この小説」という特集が組まれており、読者によるランキングが発表されていた。本作は、宮部作品の中では最も上位の7位にランクインしていた。なるほど、あの軽妙でポップな作風は漫画向きかもしれない。また、何月号か忘れたが、「活字倶楽部」という雑誌の宮部作品人気ランキングでは堂々の第1位であった。
宮部ファンの間でも人気の高さがうかがえる本作だが、人気の要因は主に宗野直、哲の双子の兄弟にあるのだろう。しかし…申し訳ないけど僕は苦手だなあ、この乗りは。マナカナみたいな双子姉妹なら微笑ましいと思えなくもないが。それでも許せる気になるのは、宮部さんの人徳の賜物だろう。
設定がこれまたぶっ飛んでいる。宗野兄弟の家に、泥棒が落ちてきた。何と宗野家は、両親がそれぞれ駆け落ちしていたのだった。かくして、泥棒氏はしばしば宗野兄弟の父親代わりとなり、様々な事件に巻き込まれるのだった。
宗野兄弟の絶妙な台詞回しにいらいらしながらも、一方では満更でもなさそうな泥棒氏。善人ではないけど根っからの悪人でもない泥棒氏のキャラクターが、僕にとっては大きな救いだった。一見奇妙な組み合わせだが、つくづく宮部さんの抜け目のなさを感じる。宗野兄弟に手を差し伸べたのが博愛主義者じゃなくて、本当に良かった。
最後は何だかしんみりとさせられてしまったが、雑誌で続きが連載されているようだ。単行本化がいつになるのかはわからないが、きっと買ってしまうに違いない。