森 博嗣 06 | ||
まどろみ消去 |
MISSING UNDER THE MISTLETOE |
「犀川&萌絵」シリーズの合間に刊行された、初の短編集。しかも全編書き下ろしである。シリーズとは違った森ミステリィの魅力が堪能できる。やっぱり森さんはミステリィが好きでたまらないんだな。
バリエーションに富んだ11編を収録しているが、個人的に最も好きなのは「真夜中の悲鳴」である。取っ付きにくいテーマかもしれないが、森さんの本職は研究者であることを再認識させられる。これって、森さんの専門分野に近いのだろうか?
同様に「キシマ先生の静かな生活」にも研究者らしさが表れているが、こちらは何だか意味深である。自叙伝的な内容と解釈できないこともないが、きっと深読みなんだろう。でも、キシマ先生の気持ちはわかる。研究者森博嗣の本音かな?
「犀川&萌絵」シリーズの作品も2編収録されている。「ミステリィ対戦の前夜」は本格好きならニヤリとさせられるだろう。「誰もいなくなった」もいい。最後にちょっとだけ登場する犀川が、美味しいところをしっかり持っていったりして。
夫婦を描いた作品「彼女の迷宮」と「悩める刑事」も注目される。前者は切なく、後者はユーモラスだ。読み比べてみると面白い。他にも、サイコサスペンス風の「純白の女」、よくわからないけど怖い「心の法則」、ゲームのことらしき「何をするためにきたのか」など、魅力は尽きない。
森さんの作風は好みがかなり分かれるだろう。でも、本作は森作品が苦手な人でも楽しめると思うのだが、どうだろう? 長編よりも「らしさ」が出ているんじゃないかな。