森 博嗣 17

月は幽咽のデバイス

The Sound Walks When the Moon Talks

2000/08/01

 「瀬在丸紅子」シリーズ第3作。久しぶりに出たな、大仕掛け。

 ある豪邸に囁かれる奇怪な噂。そこには狼男が住んでいるという。邸内のオーディオルームで血まみれの死体が発見された。なぜか床は水槽からこぼれた水で濡れており、ガラスの破片が散らばっていた。果たして狼男の仕業なのか?

 もちろんそんなわけはないのだが…言うまでもなく状況は衆人環視の密室である。瀬在丸紅子が明かす意外な真相は、そして真犯人は?

 確かに意外は意外だな。感想は、「なるほど」と「なあんだ」が半々というところである。こういう物理トリックは好きだけど。なぜ水槽から水がこぼれたかが焦点であるとだけ言っておこう。実家で飼っていた金魚の世話をしたことを思い出す。

 屋敷の仕掛けに関しては、森作品だけに今さらああだこうだ言う気はないのだが、恐ろしい屋敷である。家人は慣れているんだろうけど、来客はたまったもんじゃない。セコムなど足元にも及ばない、究極のセキュリティシステムかもしれない。

 おそらくシリーズのキーパーソンであろう保呂草の存在感が、作を重ねるごとに薄くなっているような気がするが。犀川と比較しちゃいけないんだろうけど、この先何かやらかすんだろうか。練無と紫子は盛り上げキャラだからいいとして。どうしても練無のキャラには馴染めないな。

 正直なところ、このシリーズは今のところ可もなく不可もなしなのだが、何だかんだで新刊が出ると読んでしまう僕であった…。



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