森 博嗣 39

虚空の逆マトリクス

INVERSE OF VOID MATRIX

2003/01/19

 個人的にはすっきりしないまま完結したVシリーズ。新シリーズが開始されるのか今のところ情報がないが、とりあえず短編集第四弾を手に取ってみる。

 過去三作の短編集と比較して、最も雑多な印象を受ける。それぞれにらしさを感じさせるものの、メインディッシュはやはり最後に収録された犀川&萌絵コンビ再登場作品に違いない。特に、僕のような犀川&萌絵後遺症の読者にとっては。

 最初の作品「トロイの木馬」は、島田荘司氏編のアンソロジー『21世紀本格』が初出。買ったのに読んでいなかった。うーん…つい最近読んだあの作品のような、ご自身のあの作品のような。要するに目新しくはない。この手のネタはもう…。

 「赤いドレスのメアリィ」は、謎の要素は含まれるものの、何となく森ミステリィではなく森文学と呼びたい一品。「不良探偵」は、作中の作家の印税から森博嗣さんの収入はいくらだろうと下世話な想像をしてしまった。「話好きのタクシードライバ」はわかる気がするなあ。僕自身、タクシーという閉鎖空間は正直苦手だし。

 「ゲームの国」は…ミステリィというより回文大会である。何が凄いかってこれだけの回文を考えたことが凄い。ミステリィのネタを思いつくより大変そうだ。「探偵の孤影」は、珍しく海外が舞台? 何となく往年の古典作品のような香りが漂う、異色の一編。そう感じるのは、シリーズ作品のようなエキセントリックな人物がいないからだろうな。

 注目の犀川&萌絵シリーズ「いつ入れ替わった?」は、ネタがアホらしいのはさて置き、つ、遂に…(以下自粛)。できたら長編での犀川&萌絵コンビ再登場を願いたいが、だめならせめて短編集にまとめませんか?

 などと思っていたら、巻末に気になる予告が。これってやはり…真賀田四季ですか? 2003年の夏よ、早く来たれ。



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