森 博嗣 44

MATEKI 魔的

Magical Words behind me

2003/07/27

 最初にお断りしておくが、僕は詩を解する心を持っていない。というより読むことがない。僕の中では中原中也だろうが三代目魚武濱田成夫だろうがヘルマン・ヘッセだろうが皆一緒。詩を愛する方は、僕の乏しい感性を笑っていただいて構わない。

 失礼ながら、詩集ほど売れないジャンルはない。詩で食べていける人はほとんどいない。そんな中、作家業で十分食べていける森博嗣さんが、詩集を出すという。

 最初から意地悪い読み方をするつもりだったことを告白しよう。このような心積もりだから、感性に響くものなどあろうはずがない。ただ機械的にページをめくる。右から入って左から抜けていく。会社帰りに書店に寄り、そのまま電車内であっという間に読み終えた。何も覚えちゃいない。何も残っていない。

 いや、残ったものが二つある。一つは、もう開くこともない本。もう一つは、「森博嗣」の看板があれば何でも商品にしていいのかという疑問。

 実際、「詩集」としては異例の売上げを記録するに違いない。ファンクラブ会員の多くが買うだろう。中には僕のようなひねくれ者がいるとしてもだ。主にビジネス書を刊行しているPHP研究所である、ビジネスとしては成功かもしれない。

 ビジネスと割り切るならそれでいいが…作品そのものまでビジネスライクになってはいないか。特に最近のシリーズ作品でその傾向が顕著であるように感じられるのは気のせいだろうか。「出しすぎ」の弊害が出てきている。杞憂に終わればいいが。

 詩を解さない僕には、純粋に「詩」としてのレベルは判定不能だ。そもそも、悪意を込めて読むような人間にそんな資格はない。だが、精魂込めて書き上げたようには思えないこともまた事実。作家業があくまで森博嗣さんのサイドワークならば、本作はサイドワークのサイドワーク。それ以上のものではない。



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