森 雅裕 15


流星刀の女たち


2005/11/04

 森雅裕作品を語るキーワードといえば、芸術、モータースポーツ、そして「刀」。いやあ、ロマンだねえ。刀鍛冶の世界はわからないけど、これはロマンだよ。

 明治31年、榎本武揚が刀匠・岡吉国宗に鍛刀を命じたという刀。宇宙を旅した隕鉄から、苦心の末に制作された刀二振りと短刀二振りを、榎本は「流星刀」と命名したという。

 主人公の一尺八寸(かまのえ)環(たまき)は、女子大生にして刀鍛冶。キャンパスの隅に鍛錬場を構える、鍛刀部の部長である。念願叶って隕鉄を入手した環は、職人人生を賭けて難題に挑む。やがて一振りの流星刀が生み出された。

 隕鉄を鍛えるのが困難な理由は、一言で言えば不純物の多さにある。汚い交換条件を呑んで隕鉄を入手した環。この親にしてこの子あり。なぜそうまでして困難に挑むのかって? そこに隕鉄があるからさ。ロマンだからさ。親友にして剣客の千手正重(まさえ、まさしげじゃないよ)の支え。そして後輩美弥子の大失態…。

 やがて流星刀を巡って争奪戦が勃発する。ロマンを解さないばかりか、あまりにも典型的な悪役ども。それでも気骨溢れる乙女たちは屈しない。来るべき最終決戦に向けて、環が密かに進めていた計画とは。さすが流星刀を生み出した刀鍛冶。一本取られたな。

 これは女たちの物語だ。最初は敵対しているように思われた、やくざの三代目にしてコンバット研究会部長の五百部(いおべ)蘭子も、実はメンタリティを共有していた。設定のぶっ飛び具合も、名前の難読さも、ここまでやれば気持ちいい。

 刀鍛冶の何たるかを理解したとはとても言えないが、鍛錬場の熱気は、環の流星刀に賭ける熱意は十分に伝わってきた。現代にあって、ヴィトンだのグッチだのプラダだのを欲しがらず、隕鉄を欲しがる質実剛健な女子大生がいてもいいじゃない。

 このオチがいいねえ。ロマンは続く。ところで、この写真の女性はどなた?



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