長岡弘樹 02


傍聞き


2014/01/22

 長岡弘樹さんの短編集第2作である。全4編、主人公はいずれも専門性が高い職業に就いており、そういう点でも横山秀夫さんの警察小説を彷彿とさせる。

 「迷走」。間もなく義父になる隊長と、救急車に同乗していた隊員。男性が刺された現場に駆けつけてみると…。救急車のたらい回しは現実にも問題になるが、受け入れ体制が整ったのに病院に向かわない意図は何か。なるほど!! と膝を打ったが、同時に最初から言えよとも思う。どうか寛大な処置をお願いしたい…。

 第61回日本推理作家協会賞短編部門受賞作品「傍(かたえ)聞き」。解説には選考委員の賛辞が並ぶが、個人的には「迷走」の方が評価が高い。刑事の母と、冷戦状態らしい娘。口を利かない娘が、わざわざはがきで主張する理由とは。家庭小説であり警察小説であるが、個人的には前科者への偏見は考えさせられた。

 「899」。消防隊員が好意を寄せる女性の自宅付近で、火災が発生。彼は同僚とともに女性宅に立ち入ったのだが…。うーむ、どんな意図があろうと同僚の行為は叱責されて然るべきだろう。でも、それ以上に突っ込みたいのは女性の方。僕自身が親になったからか、赤子を1人で置いておく神経に首をかしげた。これで懲りたかどうか。

 「迷い箱」。主人公は元受刑者の更生保護施設を運営する女性。気にかけていた1人の男が、採用された会社の寮に入るため、施設を退去したが…。男の犯した罪。彼女がこの仕事に就いた背景。テーマ的に、長編へのアレンジも十分に可能だろう。生半可な覚悟でできる仕事ではない。何とか立ち直ってほしい。

 遅読の僕でもあっという間に読み終える薄さが恨めしいではないか。ああもったいないったらもったいない。500円ちょっとでこれほどの内容。『偽りの陽だまり』ともども、双葉文庫は大増刷でプッシュするべきだろう。いつ売るの? 今でしょ!!!

 新刊が読めるのは果たしていつか。待つのは慣れているし気長に待とう。



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