長岡弘樹 04


教場


2013/12/18

 今年もランキングからミーハーに選んでみよう第1弾。警察小説のようで警察小説ではない。それというのも、主要な登場人物は警察官の卵なのだから。

 本作は、週刊文春のミステリーベスト10で第1位に輝いた。掲載号の長岡弘樹さんのインタビューによると、警察小説はほとんど書き尽くされており、まだ誰も手をつけていない分野を探したところ、警察学校が残っていたとか。

 警察官になるには警察学校を卒業しなければならない。厳しい訓練に耐えられず脱落する者。不適格と見なされ退校を命じられる者。作中の教官の指導法を、理不尽と言ってしまうのは簡単だ。これが高校の部活動なら大問題になるだろう。

 だが、これで音を上げているようでは警察官は務まらない。いざ実務に就けば、比較にならない理不尽さが待っているのだ。作中で、ある学生が警察学校を称して「篩(ふるい)」と言っているが、それは長岡さんが取材して実際に出てきた言葉だという。

 さて、警察官を志す学生たちはさぞや意欲に燃えているかと思いきや…実態は、いじめに恨みに妬みと、負の感情が渦巻いていた。フィクションとはいえ、規律が厳しい警察学校で、こんなにゴタゴタが続いていいのか、苦笑させられる。

 全6編中、第4話までの読後感は非常に悪い。報復のために、人生を棒に振ってそこまでやるか。手口が陰湿な上に唐突に終わってしまうから、始末に負えない。ええっ、そこで終わりかよっ!!! 第1話からいきなりポカンとしてしまったぞ。

 残り2話はカラーが変わる。学生をスパイに使うなど、暗躍している印象があった担当教官の風間だが、見込んだ学生にはフォローもする。最後の第6話は大変興味深い。成績優秀な学生に冷や水を浴びせる。警察官の資質を考えさせられる。

 目のつけどころで勝負したという点では、横山秀夫作品に通じるものがある。意地悪く言えば二番煎じという気もしないでもないが、清々しさの欠片もない学生たちの応酬は読み応え十分だ。この期の面々は、ちょっとやそっとではへこたれないだろう。



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