西澤保彦 03


七回死んだ男


2013/04/20

 次に何を読もうかと書店に行き、目に付いたので手に取った本作。初期の西澤保彦作品だが、画期的というか何というか…とにかくすごいのは確かである。

 主人公の16歳の少年・久太郎(きゅうたろうではない)は、特異な体質の持ち主だった。突然時間が24時間前にリセットされ、同じ日が繰り返されるのである。そのことを自覚しているのは彼だけで、周りの人は何も気づいていないらしい。

 この反復落とし穴≠ノ一旦入り込むと、同じ日が9周も繰り返されるのだから堪らない。反復落とし穴≠ェいつ始まるかはわからないし、頻度も一定ではない。こうして人よりも余分な時間を過ごしてきた彼は、年齢に似合わず老成していたのだった。

 そして、正月に祖父の家に親族が集まっていたとき、事件は起きた。例によって反復落とし穴≠ノ入った久太郎。すると、祖父が死んでいた…。彼の体質は、祖父の死までリセットしてしまうので、次の周には何とか祖父の死を阻止しようとする。

 久太郎には前周の記憶が残り、前周の反省(?)を生かし、新たな行動を起こす。タイムパラドックス云々には目を瞑るとして、彼は最初の周を除く残りの周、トライ&エラーを繰り返す。彼が老成するのも無理はない。読んでいる方も飽きてくるのだから。

 ごちゃごちゃした人間関係について行けない面もあるが、よくこんなネタを本格として成立させたものである。読み通して明らかになった真相に脱力。そりゃ失敗するのも道理である。ところが、もう1つの真相に、久太郎は気づいていなかった。

 いや、もう2つか。なるほど、彼が懸念していた事実は、当然だったわけである。そしてまさか…。強引な辻褄合わせを成立させる、久太郎の体質恐るべし。

 本作の初版刊行は1995年。翌1996年には、森博嗣氏が第1回メフィスト賞受賞者としてデビューしている。本作がメフィスト賞受賞作として刊行されていれば、もっと話題を呼んだのではないか。今読んでも新しい、時代を先取りしすぎた作品かもしれない。



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